2020 Fiscal Year Annual Research Report
航空機用CFRPの雷撃損傷メカニズムの解明とマルチフィジックス数値解析
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19H02342
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
小笠原 俊夫 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20344244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 義鎭 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 主任研究開発員 (90425786)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | CFRP / 雷撃 / 損傷解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
インパルス電流を直接印加したCFRPの電撃損傷現象のモデル化に関しては、2019年度に引き続き2種類の炭素繊維/エポキシ系CFRPに対するインパルス電流の直接通電試験を実施し、温度応答挙動および損傷挙動の評価・観察を行った。マトリクス樹脂の熱分解反応の影響を考慮した電気・熱連成解析を実施した結果、実験結果と解析結果が良く一致することが確認され、高電流インパルス電流における電気伝導モデル、発熱モデルを新たに構築することができた。 模擬雷撃試験におけるCFRPへの電気的・力学的荷重の実験による同定と検証に関しては、ローレンツ力および衝撃波によるインパルス荷重の直接測定は困難であることから、本研究では試験片背面における面外変位の応答から荷重を同定することを試みた。同定の対象としたのは、高速度撮影とデジタル画像層間法によって計測された試験片背面での面内・面外変位のデータである。インパルス荷重-背面変位関係の応答曲面を順解析によって計算し、得られた応答曲面を用いて逆解析手法によってインパルス荷重を同定した。その結果、概ね妥当な結果が得られることが確認された。 熱・電気・力学連成による雷撃損傷のマルチフィジックス数値解析手法の構築に関しては、インパルス電流を直接印加したCFRPの電撃試験結果をもとに、熱・電気連成解析により試験結果を定量的に評価した。得られた結果から今後の具体的な課題について抽出・整理を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インパルス電流の直接印加試験に関しては試験方法を確立するとともに良好な実験結果が取得されており、樹脂の熱分解反応に伴う熱収支を考慮することによって数値解析の結果とも良く対応していることが確認された。模擬雷撃試験におけるCFRPへの電気的・力学的荷重の同定については、アルミニウム合金板および銅メッシュを付与したCFRP積層板を対象とした荷重の逆推定について検討を実施し、雷撃初期の荷重同定手法としておおむね妥当な結果が得られることがわかった。 熱・電気連成のマルチフィジックス解析による損傷予測シミュレーションについては、アークルート進展挙動の影響が大きいことがあらためて確認され、今後の課題を明確にすることができた。以上のように、当初の計画通りの成果が得られていることから、おおむね順調に研究が進捗しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
インパルス電流を直接印加したCFRPの電撃損傷現象のモデル化に関しては、2019-2020年度に引き続き数種類のCFRP積層板に対するインパルス電流の直接通電試験を実施し、温度応答挙動および損傷挙動を評価する。CFRP積層板の電気伝導度、熱物性値、熱分解特性などの材料物性値を取得し、種々の材料物性が電流-電圧特性や熱応答、更には損傷挙動に及ぼす影響を多角的に考察する。樹脂の熱分解反応の影響を考慮した電気・熱連成解析を実施し、高電流インパルス電流における電気伝導モデル、発熱モデルの高度化を進める。 模擬雷撃試験におけるCFRPへの電気的・力学的荷重の実験による同定と検証に関しては、ローレンツ力および衝撃波によるインパルス荷重を推定するため、2020年度に引き続き試験片背面における面外変位の応答から逆解析によって荷重を同定する。また、推定された力学荷重によるCFRP積層板の損傷を、数値解析によって推定する。プラズマ放電可視化と電流密度同定を目的として、雷撃印加点近傍を高速度カメラによって時系列で観察することにより、沿面放電の時間経過を実験的に取得し、電流密度分布の正確な同定を行う。観察時に光学フィルタを適用することで、損傷進展挙動の観察も試みる。 熱・電気・力学連成による雷撃損傷のマルチフィジックス数値解析手法の構築に関しては、模擬雷撃によって発生するプラズマの電磁熱流体解析に着手し、実験結果との対応を確認する。インパルス電流を直接印加したCFRPの電撃試験結果およびアークエントリー試験の結果をもとに、熱・電気連成解析により試験結果を定量的に評価する。
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