2020 Fiscal Year Annual Research Report
Study on reduction of airfoil friction-drag and noise by control of turbulent structures in transitional and turbulent regions
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19H02350
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
淺井 雅人 東京都立大学, システムデザイン研究科, 客員教授 (00117988)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲澤 歩 東京都立大学, システムデザイン研究科, 准教授 (70404936)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 流体工学 / 航空宇宙工学 / 乱流 / 乱流遷移 / 空力音 |
Outline of Annual Research Achievements |
リブレットを用いた表面操作による乱流摩擦抵抗低減機構と乱流遷移への影響に関する研究ならびに層流域でのラフネスによるトーナルノイズの発生機構の解明と制御の2つの主課題に取り組んだ. チャネル乱流においてリブレット壁上の瞬間ストリーク構造とその崩壊を捉えることのできる多点熱線センサアレイ(1㎜間隔に配置された48本の熱線アレイ)を活用して,最適の摩擦抵抗低減に導くリブレットサイズと乱れの生成機構との関係をリブレット壁近傍流れの安定性の視点から調べる実験的研究を進めた.リブレットによる抵抗低減はリブレット間隔及び高さがある値までは直線的に増加するが,Viscous Breakdownと呼ばれる現象により抵抗低減効果が頭打ちになることが直接数値シミュレーションで報告されている.この現象を多点熱線プローブにより初めて実験的にとらえることに成功し,その時のリブレット壁近傍流れの不安定性の特徴を実験的に調べた. 一方,層流境界層中に壁面のわずかな段差や孤立粗度があれば,それが起点となり音響フィードバックループが形成され狭帯域音(トーナルノイズ)が発生する.本年度は,音源の粗度(突起や段差)の上流に境界層厚さよりも十分に低い高さの孤立粗度が存在するときの音響フィードバックに対するラフネスの影響を解明し,フェードバック音が生じる臨界突起高さのラフネスへの依存性についても実験的に明らかにした.また,突起上流に形成される剥離泡の役割を安定性解析と実験により明らかにするとともに,受容性の視点からもフィードバック音の発生を調べ,従来のフィードバックモデルによるトーナルノイズ周波数と実験結果との違いについて考察した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リブレット壁上の乱流構造の生成を観察可能にする高分解能(1mmおよび0.6mm)の多点センサ熱線アレイの開発・製作に成功し,乱流摩擦抵抗低減の最適リブレットサイズ付近の壁面近傍の乱れの発生を捉えることができた.今後の研究の進展につながるツールを手に入れたことは大きな成果である.リブレット壁を有する乱流チャネル風洞において,この熱線アレイを用いて最適の摩擦抵抗低減に導くリブレットサイズと乱れの生成機構との関係を調べる実験を行い,リブレット壁上の粘性低層流れのブレークダウン現象を実験的に初めてとらえるなどの成果を得ている.また,リブレットの抵抗低減効果についても,リブレットの傾斜角(溝方向と主流速度方向のなす角)の影響も含め高精度の実験データを取得した. これまでの成果は国内外の講演会で発表された.さらに,波状壁面状に発達する境界層の遷移の数値実験も開始した. 音響フィードバックに対する境界層の不安定性および逆圧力勾配の影響を調べるための境界層板を用いて,フィードバック音発生の臨界突起高さを調べた.臨界突起高さの圧力勾配や安定性の特性に対する依存性,フィードバックモデルとの対応などについて実験結果が得られた.また,突起の臨界高さを境界層安定性と前縁受容性の視点から考察している.フィードバックループの素過程の解明がかなり進んだ.研究成果については,European Journal of Mechanics B/Fluidsに2編の論文が掲載された.国内の学会講演会でも成果発表されたが,2020年度に予定していた国際学会での発表は中止となった.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り,リブレットを用いた表面操作による遷移領域を含む摩擦抵抗低減に関する研究および層流境界層領域のラフネスによる狭帯域音発生に関する研究に取り組む. 乱流域におけるリブレットの効果に関しては,最適リブレットサイズ付近で生じ得るリブレット壁近傍の粘性低層での不安定現象をより明らかにするために,リブレット壁近傍流れに制御された人工撹乱を与えて不安定特性を調べる.一方,リブレットを乱流楔や乱流斑点の発達領域を含む遷移域に適用したとき,乱流楔内の摩擦抵抗低減のみならず,乱流楔の成長抑制すなわち層流域の拡大によってどの程度の摩擦抵抗低減が期待できるかを調べる.成果を学会発表やジャーナル論文として公表する. 層流境界層中の突起や段差による音響フィードバック音の発生に関しては,これまで2次元段差や突起によるフィードバック減少に注目してきたが,三次元突起によるフィードバック音の発生についても調べる.また,フィードバック音のトーナルノイズの周波数が流速の増加と共に梯子状に変化する現象を解明するため,前縁受容性と境界層不安定性の解析を進める.成果をジャーナル論文として公表する.
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