2020 Fiscal Year Annual Research Report
低潮流域に適用可能な浮沈式潮流発電システムの実海域実験
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19H02365
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
経塚 雄策 長崎大学, 海洋未来イノベーション機構, 教授 (80177948)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
胡 長洪 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (20274532)
坂口 大作 長崎大学, 工学研究科, 教授 (70244035)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 潮流発電 / ディフューザー付きタービン / 浮沈式潮流発電装置 / ロープ係留 / 奈留瀬戸 / 実海域実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度の研究については、長崎県五島市の奈留瀬戸において前年から実施していた浮沈式潮流発電の実海域実験が令和2年7月30日から8月30日まで約1ヶ月間安定的に行えたことが大きな成果であった。1か月間の安定した運転とは、大潮小潮を2回ずつ経験し、1日に4回転流するので計120回ほどの装置の方向転換が出来たということなので、ロープ係留による浮沈式潮流発電の方法はほぼ確立できたと言えるのではないか。この要因は、前年度までの実海域実験で経験した潮流中の浮沈式潮流発電装置の深度および姿勢の改善と係留ロープと潮流発電装置の干渉による複雑な絡まりをディフューザと尾翼端にロープを張った対策であると思われる。 ただし、発電量そのものについては目標の1kWまでには達していないことが問題点として残っているので、令和2年度の後半の研究では、発電量の目標を達成するための方法について実験室内に1/10スケールの簡単な模型を作り、空中で係留ロープと潮流発電装置の動きについて検討を行った。潮流が強い時に装置本体が海底上約2mと低い位置まで沈下しており、そのため潮流速が低かったことが発電量の低下の一因であると思われるので、それを解消すべく係留ロープに大きな浮力を付けることで装置本体の高度を上げる対策を考えた。また、これまでは4点係留で浮沈式潮流発電システムを考えてきたが、4点係留の場合には装置の方向(Yaw)を潮流の流向と一致させることは一般には難しいが、これを2点係留にすれば凧と同じ原理でYaw方向は必ず一致させることができる。これらのことを実験室で考案し、次年度の実海域実験において確認したいと期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間の研究期間の2年目が終わった段階であるが、令和2年8月に開発目標のひとつであった実海域での1か月間の安定した浮沈式潮流発電システムの運転に成功したことは大きな成果であったと評価される。これは、前年度までに行った実海域実験の経験があっての賜物であるが、もう一つの開発目標である現在の装置による1kW以上の発電については未達成となっている。ただし、発電量が上がらない原因については、これまでの実海域実験によって得られたデータから類推することが出来るので、それらを解消することによって徐々に目標に近づいているものと思われる。今後、未解決の課題を解消して目標を達成したいと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度が最終年度となるため、当初目標であった現在の装置によって1kWの潮流発電を達成したい。そのための改善案としては、係留ロープ側に大きな浮力を持たせて潮流発電装置全体を流速の大きな中層まで持ち上げること、これまでの4点係留から片側1点係留(合計2点係留)とすることによって潮流の流向と浮沈式潮流発電装置のYaw角を常に一致させて発電効率を上げることなどを試みる。また、本浮沈式潮流発電システムにおいては、水槽における模型実験とは異なって、装置が流れの中でどのような挙動を示すかが簡単には把握できないので、何か問題がある場合にも解決法を簡単に見つけることが難しいという問題がある。つまり、潮流は1日に4回潮止まりがあり、その度に転流するが、その周期は12時間と長いので、現場で何が起こるかを知ることさえ一般には難しい。浮沈式潮流発電装置の転流時の現象を知るためには、最低でも12時間程度撮影できる水中カメラやビデオが必要であるが、これまでは残念ながら知らなかった。ところが最近になって、空中で使用するタイムラップスカメラを透明耐圧容器に入れて長時間使用できるものの存在を他分野の専門家から紹介してもらったので令和3年の実海域実験においては、これを用いて潮流中での浮沈式潮流発電システムの挙動を撮影し、各種の問題に対処したい。
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Research Products
(1 results)