2019 Fiscal Year Annual Research Report
Quantum chemical optimization of nano-particle constituent elements eliciting a self-extinction to the ignitible liquid metal and evaluation of its flowability
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19H02382
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 愛 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 准教授 (40463781)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 隆治 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 助教 (00570897)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 液体金属 / 水蒸気 / 水素 / 水素化ナトリウム / 量子ダイナミクス / 遷移金属 / 電位分布 / 混相 |
Outline of Annual Research Achievements |
液体ナトリウムは冷却材料として有用な材料であるが、水蒸気と反応を起こすと激しい反応を起こす。ナトリウム-水蒸気反応は速く複雑なため、理論的観点からの解析が必要である。 一方、液体ナトリウムが、遷移金属であるチタンをナノ粒子として含む場合、この激しい反応が抑制される事が実証されている。この、ナトリウム-水蒸気反応と、遷移金属チタン層上のナトリウム-水蒸気反応の差異については、第一原理計算による、ナトリウム数原子とチタン安定面であるTi(0001)面との界面の電子状態の解析が行われてきたが、水分子を含めた反応性の差異を量子化学的に解析した例が無かった。ナトリウム-水反応は、遷移金属チタンの有無によって異なるはずであり、さらに、遷移金属が存在しない場合であっても、ナトリウムと水の接触界面では気相と液相が混ざり合う反応があり、反応後には固体のナトリウム酸化物も生成するなど混相状態である。このような混相領域をモデル化し、最も厳しい条件である高温ナトリウムと水の反応が遷移金属チタンの有無によって反応過程に如何なる差異があるか、量子化学的に探った。高速化量子分子動力学計算をナトリウム-水反応と、金属チタン上のナトリウムという混相領域におけるナトリウム-水反応を解析する事に適用し、反応過程を比較した。 ナトリウム相へ水分子が近づく際、水分子は、水素原子をナトリウム表面側に配向し吸着する様子が見られた。さらに水分子が衝突した後、水素原子がナトリウム表面に留まり、負に帯電した吸着水素となった。化学吸着した負電荷に帯電した水素原子ペアの共有結合エネルギーは、水素分子の共有結合エネルギーの実験値-104 kcal/molより小さくエネルギー的に不十分な吸着水素が存在する様子が見られ、実験で水素分子が低減する背景には、こうした分子未満といえる吸着水素が存在するためではないか、と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時間スケールや計算対象とするサイズの規模から考えて、密度汎関数法や、電子の授受を考慮しない分子動力学法では難しい、気固混相領域における化学反応挙動に高速化量子分子動力学法を適用して解析したところ、気相ナトリウム上では水分子から水素分子が生成し、ナトリウム表面上から脱離した。一方、チタン金属表面上の気相ナトリウムと水分子との反応においてはナトリウム表面上に水素化ナトリウムを生成した。既往の研究でも、水素化ナトリウムを遷移状態として水素発生にいたる化学反応機構の解析などが行われている。このように、生成する水素を水素分子として飛散させずにナトリウム表面もしくは内部に留めることが、爆発的なナトリウム-水反応の抑止に効果があると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
高速化量子ダイナミクス計算の解析結果から、チタン金属表面上の気相ナトリウムと水分子との反応においてはナトリウム表面上に水素化ナトリウムが生成する様子が見られた。既往の研究でも、水素化ナトリウムを遷移状態として水素発生にいたる化学反応機構の解析などが行われている。しかし、低減した水素ガスが発生している実験事実もあるため、より一層反応の進行した、反応後期の副生成物や水素形態の確認も並行して行う。より高圧な100atm程度の気相ナトリウムと水分子が共存する、温度・圧力一定のNPTアンサンブル条件下のバルクモデル中でのナトリウム-水反応の量子ダイナミクスによる反応解析も行う。多くの水分子を一度に解析する分子夾雑な反応場で解析する事によって、遷移金属上や場合によっては遷移金属中に取り込まれる水素の形態が理解できるようになると想定する。 水素吸蔵遷移金属元素は3d族以外に、4dおよび5d族にも存在する。水素吸蔵材料は主に気/固界面の反応場における効力が発揮されるが、同様の効果が反応活性に富む高温の気相アルカリ金属に働いて自己鎮火に導かれるのではないか、という水素吸蔵能との関係も考えられるため、ナトリウム液体の水との爆発性反応の抑止および発生水素の減少をもたらすチタン以外の3d、4d、5d遷移金属表面上における水分子とナトリウム原子との表面反応モデルによる解析も進める。 高温ナトリウムの気相密度を再現できる原子数を扱い、現実的なナトリウム-水反応を解析し、チタン以外の遷移金属の効能の作用機序を、ナトリウム表面電位に起因して発生水素の形態も変化し、爆発性変容が導かれる、という仮説の検証を進める。 水素発生を抑制する効果が期待される他の金属ナノ粒子元素種の特性も同様に評価し、最適な金属種および成分比の同定や、得られる発熱エンタルピーをより大きなスケールの伝熱計算に適用し安全性を検証する。
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