2019 Fiscal Year Annual Research Report
レーダポーラリメトリによる広域河川氾濫領域の被災状況把握および救助用陸路検出
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19H02389
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
佐藤 亮一 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (00293184)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 寛喜 新潟大学, 自然科学系, 教授 (20251788)
山口 芳雄 新潟大学, 自然科学系, フェロー (50115086)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 被災地観測 / 自然災害 / レーダポーラリメトリ / 合成開口レーダ / リモートセンシング / 洪水 |
Outline of Annual Research Achievements |
レーダポーラリメトリを用いた広域河川氾濫領域の被災状況把握のための偏波画像解析手法を開発するために,2019年度は以下の研究を行った. 研究期間を通して,水害被災領域からの特徴ある偏波散乱指標を明確にするために,様々な水害被災モデルに対する偏波散乱測定を行っていく.その準備として,過去に氾濫した河川およびその周辺の住宅領域の現地調査から行った.この調査結果を活かし,橋梁モデルや洪水時水田モデルに加え,河岸侵食を模した河川水面と河岸の境界モデル,浸水時および浸水後の住宅・道路モデル等の設計・作成をすすめることができた. 水面-河岸境界の縮小モデルに対しては,電波暗室にて偏波散乱測定を実施し,XバンドでのPolSARデータを取得した.得られたPolSARデータの解析結果から,散乱波の偏波特性を考慮することで,上空からは認識しづらい「河岸下部が部分的に洗掘されている状態」を検知可能であることがわかった.水害時の住宅-道路モデルの測定は,測定機器の不具合で修理が必要となったため,初年度は実行することができなかった.しかし以下のように,同モデルの一部に応用可能な電磁界理論を発展させることはできた. 道路表面に存在する小さな亀れつや陥没は,大雨や冠水により短時間で大量の水がしみこみ,通行に支障をきたすような大きさに成長し,時には道路そのものを破壊する.本研究では,水で覆われた道路(完全導体)上に存在する隣接する亀れつに対する電磁波散乱解析を行った.得られた解を用いた数値計算結果より,特定偏波の散乱界を用いることで,亀れつの状態把握,特に深さ推定ができる可能性があることがわかった.今後は,亀れつを有する道路を建築物で囲んだモデルに拡張し,都市部での道路被災状況の把握に役立てる理論に発展させていく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた研究順序の変更や,測定器具の不具合による若干の遅れはあったが,水害災害時における広域河川氾濫領域と避難救助用陸路の状況把握を実現するための基礎モデル実験,理論解析は進められており,当初予定していた目標は 概ね達成できたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
各モデルに対する偏波散乱測定で取得されたPolSARデータの詳細なデータ解析に加え、 偏波散乱解析(FDTD電磁界シミュレーション)を行う.このシミュレーションで用いる各モデルの媒質の複素誘電率は,誘電体プローブとVNA用いて測定した測定値を用いる予定である.新たに導入したGPGPU環境に適した並列計算プログラムの改良を行う. 電磁界シミュレーション(理論)と偏波散乱測定(実験)で得られた偏波特性を用いて、各被害の被災状況把握に適した偏波指標に閾値を用いる簡易アルゴリズムの構築を試みる.誤警報の確率が変動してしまう可能性があるので,一定の範囲内に収まるように,機械学習の要素を適用して工夫する予定である. 住宅-道路モデルについては,簡易住宅モデルを複数つなぎ合わせて構築し、浸水した場合,土砂で部分的に埋もれた場合,亀裂・陥没部を有する場合等の簡易モデルを作成し,電磁界シミュレーションおよび偏波散乱測定を行う. 航空機および衛星搭載のPolSARで取得されてきた実PolSARデータに対しても偏波散乱解析を行う.電磁界シミュレーションと簡易モデルに対する偏波散乱測定の結果から導かれた被災状況把握アルゴリズムを,実PolSARデータに対しても適用し,その妥当性を検証する.特に、緊急観測時に求められる任意のフライト方向やレーダ入射角に対する有効性について,詳細な検討を行う予定である. また,水害は水位に応じて被災状況が異なるので,様々な水位に対する被災状況を把握できる観測データ取得方法についても検討をはじめる.
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Research Products
(7 results)