2021 Fiscal Year Annual Research Report
基岩層を介した水移動を組み込んだ新たな表層崩壊予測モデルの開発
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19H02392
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| Research Institution | Hokkaido University |
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Principal Investigator |
桂 真也 北海道大学, 農学研究院, 助教 (40504220)
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2019-04-01 – 2023-03-31
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| Keywords | 基岩層 / 水移動 / 表層崩壊 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
毎年甚大な人的・物的被害をもたらしている表層崩壊の発生場所とタイミングを精度よく予測することは社会的に強い要請である。既往の表層崩壊予測モデルでは土層内の水移動のみを考慮してきたが，近年の研究によりいったん土層から基岩層へ浸透した水が土層へ復帰し，土層内の地下水位に影響を与えていることが明らかになってきた。本研究では，詳細な地下水位，水温，水質観測により，基岩層から土層への復帰が土層内の地下水位の時空間的変動に与える影響を明らかにする。また，土層・基岩層内の水移動を特徴付ける水分特性（飽和透水係数および保水性曲線）を計測し，基岩層も含めた浸透流解析と斜面安定解析を組み合わせることで，基岩層を介した水移動を組み込んだ新たな表層崩壊予測モデルを開発することを目的とする。
本年度は，研究実施計画に沿って，[1]土層内の地下水位，水温，水質の計測，[2]基岩層の水分特性の計測，[3]基岩層内の地下水位，水温，水質の計測，[4]計測結果の解析，[5]浸透流解析による斜面内部の水の流れの再現を行った。[2]は[5]で基岩層も含めた浸透流解析を実施する際の入力値となり，基岩層を介した水移動を組み込んだ新たな表層崩壊予測モデルの開発を進める上で基礎的なデータとなる。[1]，[3]の地下水位，水温，水質は，前年度から引き続き継続的に計測しており，着実にデータが蓄積されている。これを踏まえ， [4] の基岩層から土層への復帰が土層内の地下水位の時空間的変動に与える影響についての検討を実施し，[5]の浸透流解析を開始したところである。[1]，[3]の地下水位，水温，水質の計測結果は，[5]の浸透流解析の結果と比較することで解析の妥当性を評価する際の重要なデータとなる。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は，[1]土層内の地下水位，水温，水質の計測，[2]基岩層の水分特性の計測，[3]基岩層内の地下水位，水温，水質の計測，[4]計測結果の解析，[5]浸透流解析による斜面内部の水の流れの再現を計画していた。[1]については，過年度開始した計測を本年度も引き続き実施した。流域内の1地点の土層内に掘削した井戸内の地下水位と水温を連続観測するとともに，現地に赴いた際に井戸内の地下水を採取して水質（電気伝導率，pH，各種イオン濃度など）を計測した。さらに，3地点ののべ11深度に埋設したテンシオメータにより間隙水圧を連続観測した。[2]については，過年度流域内の2地点において実施した調査ボーリング（掘削深度は25mおよび35m）により採取されたボーリングコアサンプルを用いて，研究代表者がこれまでに確立した室内試験法により，水分特性を計測した。その上で，水分特性と基岩層の風化区分との関係の検討や，過年度実施した現場試験による透水係数と室内試験による透水係数との比較を踏まえた亀裂の影響の検討を行った。[3]については，過年度開始した計測を本年度も引き続き実施した。ボーリング孔内の地下水位と水温を連続観測するとともに，現地に赴いた際にボーリング孔内の地下水を採取し，[1]と同様に水質を計測した。[4]については，[1]，[2]，[3]の結果を踏まえ，基岩層から土層への復帰が土層内の地下水位の時空間的変動に与える影響について検討した。[5]については，対象斜面の地形と土層厚，基岩の層構造，土層・基岩層の水分特性を用いて斜面モデルを作成した。その上で，地表面に降雨を与えて浸透流解析を行うための準備として，初期条件，境界条件の設定方法等について検討した。このようにすべての項目において順調に進捗している。
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| Strategy for Future Research Activity |
今後は，これまでの進捗状況を踏まえ，[1]土層内の地下水位，水温，水質の計測，[3]基岩層内の地下水位，水温，水質の計測，[4]計測結果の解析，[5]浸透流解析による斜面内部の水の流れの再現に継続して取り組む。[1]，[3]については，今後も引き続き積雪期にも計測を継続できるようにする。[5]については，浸透流解析により得られた土層内・基岩層内の地下水位の計算値と，[1]，[3]の計測値を比較することで，浸透流解析の妥当性を評価する。再現精度が低ければ，妥当な解析結果が得られるよう，初期条件，境界条件，水分特性の与え方等を随時見直しながら，検討を進める。
さらに，新たに[6]新たな表層崩壊予測モデルの開発，[7]基岩層を介した水移動が表層崩壊に与える影響の評価に取り組む。[6]については，[5]の結果を斜面安定解析に導入し，土層の安全率を評価することで，基岩層を介した水移動を組み込んだ新たな表層崩壊予測モデルを開発する予定である。[7]については，[6]のモデルによる計算結果と，既往のモデル（基岩層を不透水性と考える）による計算結果を比較することで，基岩層を介した水移動が表層崩壊に与える影響を定量的・多角的に評価する予定である。
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Research Products
(5 results)
