2019 Fiscal Year Annual Research Report
Efficient infrasound sensing based on good knowledge of hearing
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19H02396
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
鈴木 陽一 国立研究開発法人情報通信研究機構, 耐災害ICT研究センター, センター長 (20143034)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 竜一 国立研究開発法人情報通信研究機構, 耐災害ICT研究センター応用領域研究室, 主任研究員 (30323116)
山高 正烈 (崔正烈) 愛知工科大学, 工学部, 准教授(移行) (60398097)
坂本 修一 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (60332524)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インフラサウンド / 自然災害 / 音空間知覚 / 非線形信号処理 / GeoRTF |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,世界中で自然災害の発生頻度が高まり,災害規模も増大の傾向を見せている.減災には,災害に関連して発生する様々な事象のモニタリングが有効であり,津波や噴火で発生するインフラサウンド(超低周波音)は,これらの事象の早期検出に有効である.しかし,闇雲に情報を集めるだけでは有益な情報は得られず,IoT 時代にふさわしい効率的な環境モニタリングの実現に役立つ技術の開発が急務である.ここで人間の持つ聴覚系に着目すると,ヒトは両耳というわずか2つのセンサーからの信号をコンピュータとは異なる計算原理に基づく聴神経および脳内聴覚野での極めて効率的な情報処理により,生活上必要十分な精度で周囲の環境を瞬時に把握することができる. そこで本研究課題では,少数のインフラサウンドセンサーによる効率的な環境情報の取得・解析技術を非線形信号処理や聴覚情報処理機構を取り入れることにより実現する.当該年度は研究期間の初年度にあたり,研究環境の構築・整備と基礎検討に重点を置いて研究を実施した.広域かつ多地点でのインフラサウンド観測には,小型で安価な観測装置が必要不可欠である.しかし,MEMS モジュールとシングルボードコンピュータから成る観測装置では,モジュールにおける観測データの保存レジスタのアップデート間隔とシングルボードコンピュータからの読み出し間隔の同期が必要となる.専用の同期機構を持たせることは装置の複雑化につながり,小型・安価に反する傾向を招く. そこで,このような機構で取得されるデータの構造をモデル化し,統計的な推論により,観測されるデータだけからアップデート間隔を推定する手法を検討した.考案したアルゴリズムについては,基本部分を電子情報通信学会の研究会で発表するとともに,さらに発展させた内容を 本分野最高水準のIEEEの国際会議(ICASSP2019)へ投稿し採択された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画は,要素技術の検討と室内実験環境の整備を中心に研究活動を実施することであった.要素技術の検討としては,地形と建物による反射・回折を考慮した音伝搬特性の到来方向依存性(geography-related transfer function,GeoRTF)検討のための実験機器準備を行うというものであった.そこで,複数台の現有する MEMS 気圧センサーに基づく超低周波音観測装置の内部構造を解析し,安定かつ信頼性の高いデータが得られるように改修を施した. また,今後実験により収集される観測データを効率的に扱えるようにするため,広くインフラサウンドの観測が行われている地震や火山観測の分野で利用されている東京大学地震研究所が開発した WIN フォーマットに対応するようにソフトウェアの開発を実施した.一方,GeoRTF を考慮した Compressive Sensing 信号処理の基本整備を行うことや,聴覚における高効率知覚機構について,周波数スペクトル形状や聴覚の空間知覚効果に関する知見の整理および異周波数帯域相互作用に関する知見の整理を行う作業についても検討を実施できた.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に十分には実施ができなかった,聴覚の高効率知覚機構に関する知見の整理および室内実験環境の整備に関して,引き続き準備を行う.初年度に整備したインフラサウンド観測装置を用いて,室内の複数箇所で同時に信号観測を行うことで,扉の開閉や昇降機の上下移動など屋内のどこかが起源の信号も,建物の中の設置場所に依って障害物の影響で観測信号が変わるのであれば,本研究課題の元々の着想と同様な状況を小さなスケールで,高い頻度で再現でき,研究を効率的に推進することができる.さらに,屋内での観測では扉の開閉など他の要因の信号も取得されてしまうが,複数の観測装置を設置することで,外来の音との分離ができるのであれば,常時観測に掛かる障害が屋外設置よりも大きく軽減されるため,都合が良い.一方,単純な構造体が存在する場合の音の伝達特性の変化についても並行して調査を進める.
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