2019 Fiscal Year Annual Research Report
合金組織形成ダイナミクスの原子論的理解に向けた分子動力学解析の時間スケール加速
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19H02415
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澁田 靖 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (90401124)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 金属物性 / 時間加速分子動力学 / メタダイナミクス / ハイパーダイナミクス / スローダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では合金組織のさらなる高精度制御に向けて,時間スケールの限界から現行のMD法では到達不可能な組織形成に係るスローダイナミクス現象の原子論的描像を明らかにすることを目的としている.一般の分子動力学法では原子の運動を追随するためフェムト秒程度の小さな時間刻みが不可欠であり,時間スケールの加速は容易でない.そこで2019年度は,初めに時間加速化MD手法およびコード開発を行った.コード開発の一部および二結晶系解析の一部は博士研究員を雇用して遂行した.具体的にはメタダイナミクスのバイアスポテンシャルを用いたHyperdynamics手法として知られるCollected Variable driven Hyperdynamics (CVHD)法をLammpsおよび,オリジナルMDコードに組み込み,時間加速化MDを実践できる環境を開発した.従来のCVHD法は一原子加速に特化し,複数原子を同時加速すると加速速度が劣化する問題点があったが,独自のアルゴリズムを開発し,複数原子を同時加速しても加速速度を維持できる手法を確立した.この方法を用い,傾角粒界を有するbcc鉄二結晶系において複数の炭素原子が粒界に偏析する過程の時間加速化MDを実践した.得られた知見を論文にまとめ,査読付き英文論文Computational Materials Scienceにて公表した.
またCVHD法を開発したベルギーアントワープ大学化学科・Prof. Erik Neytsのグループに大学院生を約2か月派遣し共同研究を遂行した.具体的には,まず加速アルゴリズムの熱力学的・動力学的正当性の検証を行い,さらにカーボンナノチューブ生成過程の触媒反応を対象として,Ni微粒子からの複数炭素析出過程の時間加速MDを行い,炭素析出による自由エネルギー変化をエンタルピー・エントロピーの両面から検討し,これらの温度・炭素濃度依存性を明らかにした.現在これらのを投稿すべく現在論文執筆中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,初年度のうちに時間加速化MDコードの開発を行い,bcc鉄二結晶系における複数炭素原子の時間加速を実現することができた.さらに大学院生を海外共同研究先に派遣し連携体制の強化も行った.これらの知見を査読付き英文論文にて公表するなど当初の計画通り順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度では遷移金属の結晶(バルク)における炭素拡散に関する加速化を実現したが,2020年度は金属微粒子などの内部構造が一様でない特殊な系における炭素拡散の時間加速化MDをの実現を目指す.
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