2020 Fiscal Year Annual Research Report
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19H02435
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今中 信人 大阪大学, 工学研究科, 教授 (30192503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
布谷 直義 大阪大学, 工学研究科, 助教 (40715314)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 酸化触媒 / 完全酸化 / 選択酸化 / イオン伝導 / 電子伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではできる限り温和な条件で気相中または液相中での有害有機物の無害化、さらには有用有機物への変換を実現できる高活性触媒の創成を目的としている。このような高活性触媒を実現するためには、触媒周囲に存在する酸素(気相中においては酸素ガス、液相中においては溶存酸素)だけでは不十分であることから、格子内部から酸素を容易に放出できる固体材料を助触媒として用いる。助触媒内部から、白金等の酸化活性種に酸素種を供給する際には、格子内の酸化物イオン伝導および酸化還元(電子伝導)が関与していると考えられることから、これらの観点から新規触媒の設計および創成を行う。 2020年度は、CeO2-ZrO2にSn4+/2+を導入することにより電子伝導を付与したCeO2-ZrO2-SnO2を助触媒とし、これをPtとともに、酸点を付与させたZrO2/SBA-16に担持したところ、常圧80℃の温和な条件で液相中のフェノールを完全浄化できることが明らかになった。 また、近年のバイオディーゼルの普及に伴い供給過剰となっているグリセリンを高付加価値化合物へと変換させるため、CeO2-ZrO2を母体とした触媒の創成を行った。その結果、Pt/CeO2-ZrO2-Bi2O3-SnO2/SBA-16が常圧30℃でグリセリンをジヒドロキシアセトンへと変換(収率53%)できること、およびPt/CeO2-ZrO2-Fe2O3/SBA-16が常圧30℃でグリセリンをグリセルアルデヒドへと変換(収率22%)できることを明らかにした。 さらに、アパタイト型構造を有するLa10Si5CoO27-dの酸素貯蔵放出特性に着目し、主触媒であるLaCoO3と組み合わせた結果、貴金属を全く使用していないにもかかわらず、気相中のトルエンを300℃で完全燃焼できることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
排水中の有害有機化合物であるフェノールを酸化分解するためには、従来は高圧高温(5~20気圧、100℃以上)が必要であったが、本研究において格子内からの酸素供給に着目した結果、常圧80℃でフェノールを完全浄化できることを見出した。 また、バイオディーゼルの普及に伴い副生するために処理が問題とされているグリセリンに対し、本研究で得られた新規触媒を用いた結果、常圧30℃にて、グリセリンを高付加価値のジヒドロキシアセトンやグリセルアルデヒドへと変換できることを明らかにした。 さらに、酸化物イオン伝導性の観点から設計したアパタイト型La10Si5CoO27-dを助触媒とし、LaCoO3と組み合わせた結果、貴金属を全く使用していないものの、気相中のトルエンを300℃で完全燃焼できることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度までの研究により、助触媒の酸化物イオン伝導および電子伝導が、活性種への酸素供給に関与することがわかっている。そこで、さらなる酸化物イオン伝導性および電子伝導性の向上による触媒の高活性化を行う。さらに、得られた触媒について、粉末X線回折測定やX線光電子分光測定により結晶構造や電子状態を調べ、また交流インピーダンス法により酸化物イオン伝導性を評価し、酸素貯蔵放出特性および触媒活性を調べることにより、格子内の酸化物イオンが触媒活性に与える影響を明確にする。
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Research Products
(10 results)