2019 Fiscal Year Annual Research Report
コロイド法による海島構造制御を通じた高性能硫化物系ナノコンポジット熱電材料の創製
Project/Area Number |
19H02440
|
Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
前之園 信也 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (00323535)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 熱電材料 / ナノ粒子 / ナノ構造制御 / ナノインクルージョン |
Outline of Annual Research Achievements |
【p型硫化物ナノ粒子】 Cu3Zn1-xAlxSnS5-yナノ粒子を化学合成し、このナノ粒子を焼結することで熱電材料を創製した。x=0において最も高いZT値(0.39@658K)を観測した。Cu-Zn-Sn-S系化合物で最も良く知られたCu2ZnSnS4(CZTS)の場合、これまで報告されているZT値はZT = 0.026(@700K)であり、CuドープされたCZTSでもZT = 0.14(@700K)(Nano Lett. 12, 540, 2012)であることから、Cu-Zn-Sn-S系化合物としては最高のZT値を示した。一方、x=1の場合[Cu3AlSnS5(CATS)]では、熱伝導率が高くなり過ぎZT値は低かったものの(0.12@668K)、極めて高い電気伝導度と低い格子熱伝導率を有しており、キャリア濃度を最適化することでZTの向上が可能であることがわかった。キャリア濃度を調節するためにAlをGaで置換したCu3Al1-xGaxSnS5ナノ粒子を合成し焼結することで熱電材料を創製し、Ga置換のキャリア輸送特性に及ぼす影響を調べた。その結果、x=0.5の場合に最も高いZT値(0.26@665K)が得られた。 また、Cu3AlSnS5(CATS)ナノ粒子にCu2SnS3(CTS)ナノ粒子をナノインクルージョンとして配合することで、CATSの極めて高い電気伝導率を大幅に低減させることに成功した。現在は配合比を変えて出力因子を最適化することに取り組んでいる。
【n型硫化物ナノ粒子】 化学合成したCuFe2S3及びCoSbSのナノ粒子を焼結することで、ナノ構造n型熱電材料の作製に成功した。格子熱伝導率を大幅に低減できたものの、組成ずれによって電気伝導率が高くなり、そのせいで出力因子がバルク材料に比べて低下したため、ZT値は従来の報告と同等であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、4種類のp型硫化物ナノ粒子と3種類のn型硫化物ナノ粒子を組み合わせ、多種多様なホスト-ナノインクルージョン構造を有するp型及びn型ナノコンポジット熱電材料を創製することを目的としている。令和元年度は、p・n型ともに、ナノ粒子の組成に着目し、原子・ナノスケール欠陥構造を精密制御することに成功した。また、CATS-CTSのp型ホスト-ナノインクルージョン系では、CTSナノ粒子の凝集状態と配合比を変化させることでメソスケール欠陥構造を制御することに成功している。現在、CATS-CTS系に関して、海島構造パラメータ(島の大きさ、島間距離、海と島の境界物性)が熱及びキャリアの輸送に及ぼす影響を調査中である。n型については、令和2年度に、アイソキューバナイト-パラコスチバイトのn型ホスト-ナノインクルージョン系の検討を行う。
以上のように、p型については当初の計画以上に進展しているものの、n型については当初予定より若干遅れた。この理由は、新型コロナウイルス感染症の影響で令和2年3月以降の実験が滞ったことにある。
|
Strategy for Future Research Activity |
4種類のp型硫化物ナノ粒子[CATS、CTS、テトラヘドライト(TET)、カルコパイライト(CHA)]と3種類のn型硫化物ナノ粒子[アイソキューバナイト(ICB)、パラコスチバイト(PCB)、チオスピネル(TS)]を組み合わせ、多種多様なホスト-ナノインクルージョン構造を有するp型及びn型ナノコンポジット熱電材料を創製する。ナノ粒子の組成、大きさ、形状を変化させることで原子・ナノスケール欠陥構造を精密制御する。また、ナノインクルージョンとなるナノ粒子の凝集状態と配合比を変化させることでメソスケール欠陥構造を制御する。 令和2年度は、p型については、CATS-CTS系、CTS-TET系、CHA-TET系を検討する。n型についてはICB-PCB系の検討を行う。
|