2019 Fiscal Year Annual Research Report
高強度マトリックスを有する酸化物系セラミックス基複合材料の開発
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19H02450
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
垣澤 英樹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, グループリーダー (30354137)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 匡史 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 上級研究員 (30426506)
下田 一哉 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主任研究員 (40512033)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 酸化物セラミックス基複合材料 / 過熱水蒸気処理 / ネック成長 / 高強度化 / クリープ |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)高強度Al2O3マトリックス形成技術の要素プロセス検討 過熱水蒸気雰囲気でのネック成長現象を調べるため、平均粒径約1μmの市販球状Al2O3粉末と独自開発した6配位Al前駆体を混合し、焼結を行った。1200℃で焼結した結果、粉末同士の接点がネック結合した組織が形成されていることが確認された。水蒸気雰囲気中と酸素雰囲気中で焼結を行い収縮率と圧縮強度を比較した結果、水蒸気雰囲気下で焼結した材料は収縮率、圧縮強度ともに酸素雰囲気中で焼結したものよりも大きな値を示した。 (2)界面コーティングの開発: 界面制御コーティング材料の最初の候補として、多くの研究報告があるZrO2を選定した。コーティング方法として、繊維とコーティング原料の液中での表面電位差を利用した静電吸着複合法を試した。まず、ポリアニオンとポリカチオンの交互吸着により繊維表面をマイナスに帯電させた。pH=3程度に調整した水に10-20nmのZrO2粒子を混合したZrO2ゾル溶液中を用意し、マイナスに帯電させた繊維を浸漬した。酸性溶液中ではZrO2粒子表面はプラスに帯電しているため、繊維表面にZrO2粒子をすき間なく均一に吸着させることができた。 (3)新規開発Ox/Oxの複合化技術の開発: 当初計画では(1)(2)で開発した技術を組合わせたCMC化に2年目後期から取り組む予定であった。しかし、開発技術の複合化を迅速に行うため、通常の原料スラリと前駆体を用いて複合化プロセスの条件検討に1年目から着手することにした。Al2O3粉末が分散したスラリを繊維織物に真空含浸させ、900℃で仮焼き後、前駆体含浸を行い1200℃で最終焼結を行うことで、大きな空隙がなく繊維束内までマトリックスが充填された複合材料が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)高強度Al2O3マトリックス形成技術の要素プロセス検討: 当初計画した通り、過熱水蒸気雰囲気中での焼結においてネック結合した組織が形成される条件を見出し、圧縮強度の向上を確認した。ネック部の定量的な評価やプロセス条件の最適化を引き続き行う。 (2)界面コーティングの開発: 当初計画した通り、界面制御コーティング材料の候補とコーティング方法を検討し、静電吸着法により繊維表面にZrO2粒子をすき間なく均一に吸着させることができた。引き続き、他の候補材料についても検証を行う。 (3)新規開発Ox/Oxの複合化技術の開発: 当初計画を前倒しし、微細な原料粉末のスラリの真空含浸で繊維束内までマトリックスが充填された複合材料を得るプロセス条件を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)高強度Al2O3マトリックス形成技術の要素プロセス検討: 前年度に引き続き、マトリックスとなるAl2O3単相のネック部の定量的な評価とその成長機構の解明、および前駆体やプロセス条件が組織や特性に及ぼす影響の理解を進め、最適処理条件の検討を行う。Y、Lu等の希土類元素の添加が水蒸気処理時にネック成長に与える影響や処理後の希土類元素の存在状態を定量評価・解析する。また、クリープ特性の改善効果について検証する。 (2)界面コーティングの開発: 前年度検討した界面制御コーティング材料の水蒸気雰囲気下での耐久性および繊維の保護性能の検証を行う。他の候補材料についても同様の検証を行う。気孔率および気孔形状の異なる多層構造を持つコーティングを繊維表面に形成する方法の開発にも着手する。 (3)新規開発Ox/Oxの複合化技術の開発: 前年度プロセス条件を検討したVaRTM法(プラスティックフィルム内で一体成型を行う真空含浸工法)を応用したスラリ含浸法に(1)、(2)で検討した材料、プロセス条件を組合わせOx/Oxの成形、常圧焼結を行う。CMC化した状態での(1)、(2)の有効性を確認し、(1)、(2)の条件最適化にフィードバックする。
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