2019 Fiscal Year Annual Research Report
Quantitative evaluation for hydrogen-induced reduction of cohesive energy through micromechanics analysis
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19H02459
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柴田 曉伸 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60451994)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 水素脆性 / マルテンサイト鋼 / 破壊靭性 / マイクロメカニックス解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
「水素脆性」とは材料中に水素が侵入することによって,材料が著しく脆化する現象である.これまでの国内外の精力的な研究により,水素脆性破壊の基本要因は明らかになりつつあるが,「破壊メカニズムに基づいた材料全体の破壊特性予測」という重要学術課題に関する水素脆性研究はほとんどなされてきていない.本研究は,高強度マルテンサイト鋼の水素脆性粒界破壊を対象とし,各破壊素過程に対応する巨視的スケール破壊特性の評価,き裂発生・伝播挙動のミクロ組織解析を行うとともに,破壊メカニズムに基づいたマイクロメカニックス解析を行い,水素 / 結晶粒界凝集エネルギー / 巨視的スケール破壊特性の相関を定量的に明らかにすることを目的としている.
本年度は,焼き入れままの0.1Cマルテンサイト鋼に対して,応力集中係数の異なる環状切欠き付き丸棒試験片を用いた低ひずみ速度引張試験およびコンパクトテンション試験片を用いた破壊靭性試験を行い,水素脆性特性を精密に評価した.破壊靭性試験により得られたき裂進展抵抗曲線から,水素濃度が高い場合,破壊開始靭性値は非常に小さいが,き裂が伝播し始めた後に不安定破壊はすぐには生じずにき裂が安定成長すること,そして,水素濃度の増加に伴ってき裂伝播抵抗が徐々に減少していくことが明らかとなった.また,走査型電子顕微鏡および電子線後方散乱回折を用いて水素脆性き裂を解析したところ,き裂は旧オーステナイト粒界を伝播していたが,微視的には連続ではなく,旧オーステナイト粒界上に多くの非破壊リガメントが残存していることがわかった.この微視的スケールでの不連続なき裂伝播が,破壊靭性試験により確認された安定き裂成長の要因の一つであると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
引張試験および破壊靭性試験によりマルテンサイト鋼の水素脆性特性を精密に評価することができた.そして,き裂が伝播し始めた後に不安定破壊はすぐには生じずにき裂が安定成長すること,水素濃度の増加に伴ってき裂伝播抵抗が徐々に減少していくこと,といったような非常に興味深い知見が得られた.また,応力集中係数の異なる試験片の引張試験結果に対するCohesive zone モデルを用いたマイクロメカニックス解析をすでに開始している.
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Strategy for Future Research Activity |
走査型電子顕微鏡および電子線後方散乱回折により,き裂伝播とミクロ組織の相関について解析をさらに進める.また,応力集中係数の異なる試験片の引張試験結果に対してCohesive zone モデルを用いたマイクロメカニックス解析を行い,水素が結晶粒界凝集エネルギーにおよぼす影響を定量的に明らかにする.
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