2020 Fiscal Year Annual Research Report
表面ナノ構造の最適設計に基づく超高耐食性アルミニウム材料の創製
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19H02470
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
菊地 竜也 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (60374584)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アノード酸化 / アルミニウム / ポーラスアルミナ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究においては、前年度に得られたポーラスアルミナの成長挙動に関する基礎的な知見を元に、新規電解質を用いてアルミニウムおよびアルミニウム合金にポーラスアルミナを生成し、そのナノ構造を最適設計することにより、高い耐食性をもつアルミニウム材料の試作を試みた。本年度の研究により得られた主要な知見は以下のとおりである。 (1)ポーラスアルミナの初期成長過程における微細構造を高分解能電子顕微鏡観察することにより、アノード酸化の極初期においても酸化物の粘性流動によってポーラス層の形成が生じていることを初めて見出し、新しい成長メカニズムのモデルを提唱した。 (2)アノード酸化においては、あらかじめアルミニウム表面に周期的なディンプル構造などのナノ凹凸構造を形成したのちアノード分極を行うことにより、電圧の増大を抑制して不均一皮膜の形成を伴う焼けを防ぐことが可能であり、この技術を用いて高電流密度のアノード酸化を行うことにより、高速アノード酸化が達成できることを見出した。 (3)新規電解質であるエチドロン酸を用いてアルミニウムおよびその合金を定電流アノード酸化すると、電圧増大の程度によってポーラスアルミナおよびプラズマ電解酸化皮膜の2種類が生じることがわかった。ポーラスアルミナ底部におけるナノ構造の最適化および厚膜化により、海水を模擬した塩化物水溶液環境において、従来に比べて500倍以上耐食性の高いアルミニウム材料を作製することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アノード酸化皮膜のナノ構造を精緻に制御し、高い耐食性をもつアルミニウム材料の作製を達成できたため、研究計画どおり順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きポーラスアルミナのナノ構造制御法を探求し、耐食性に優れたアルミニウム材料の創製を目指したい。特に、今年度までの研究において、塩基性電解質を用いて作製したポーラスアルミナが、従来の酸性電解質に比べて特異な成長挙動およびナノ構造の形成を示すことから、塩基性電解質に着目した研究を遂行し、三年間の研究の高度化と総括に繋げたい。
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