2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19H02471
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
川村 みどり 北見工業大学, 工学部, 教授 (70261401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 良夫 北見工業大学, 工学部, 教授 (20261399)
木場 隆之 北見工業大学, 工学部, 助教 (40567236)
室谷 裕志 東海大学, 工学部, 教授 (70366079)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 銀薄膜 / 耐久性 / 水蒸気 / クリプトン |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、我々がこれまでに開発してきた銀薄膜に極薄表面層を積層させた構造において、JISで定められた光学薄膜の高湿度試験基準も満たすことができるという知見に対し、その凝集抑制メカニズムを明らかにする取り組みを実施している。 まず最初のアプローチとして、水蒸気導入可能なスパッタ装置を用いた検討を行った。予備的検討として銀単層膜(150nm)のアズデポ状態での物性及び光学薄膜の高湿度雰囲気下(55℃、90%RH 16時間)での環境試験後の凝集挙動を従来の装置で得られていた膜と比較した。アズデポ物性はほぼ同一であったが、凝集挙動はやや抑制されていることが判明した。次に、銀単層膜を作製し、真空状態のまま水蒸気雰囲気に一時間曝して装置から取り出し、引き続き環境試験を実施した結果、水蒸気暴露を経た試料においてより凝集の程度が大きいことを確認した。水蒸気・酸素両者に曝した試料も作製したが、大きな変化が認められなかった。そこで次に成膜装置内で水蒸気雰囲気に曝す際、より環境試験の条件に近づけることで、真空装置から取り出した直後の変化を追跡することにより、さらに水蒸気暴露の影響を直接的に評価できると思われるので、実験手法を改良して再度実施している。 上記と並行して、別のスパッタ成膜装置を用い、クリプトンガスを用いて銀薄膜を成膜し、得られたアズデポ膜の物性、及び環境試験後の物性を調査した。銀薄膜のアズデポ物性については、通常のアルゴンスパッタ銀単層膜に比べて、結晶子径が極めて大きく(約70nm)、基板を加熱していないにも関わらず低い抵抗率値を示すことを見出した。環境試験後の凝集挙動については、銀単層膜では同様に凝集が生じるのを確認し、アルミ表面層を積層した構造においては、これも従来のアルゴンスパッタ膜と同様に高い凝集抑制効果が得られ、高い反射特性を保持できることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二種類のアプローチにより、高湿度雰囲気下での銀薄膜の凝集メカニズムの解明に取り組んでいる。両方において、それぞれ新たな知見が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
水蒸気導入可能なスパッタ装置を用いて、銀単層膜成膜直後に、水蒸気または酸素またはその両方に曝す。その場合の基板温度を大気中で恒温恒湿度器を用いた環境試験と同様に55℃に設定する。同試験と同じ時間保持することは難しいため、1時間、3時間、および6時間保持してから装置外に取り出す。取り出した試料については各種評価を行い、その結果から凝集挙動を確認する。試料の評価としては、電気抵抗率(四探針法)、正反射率・拡散反射率(分光光度計)、表面形態(光学顕微鏡、SPM、SEM)、結晶配向性・結晶子径(XRD)等を検討する。 次に、水蒸気暴露後にアルミ表面層を積層した試料を作製する。厚さはこれまでに効果を確認している1 nm 及び3 nmとする。この積層試料については、成膜装置内での再度の水蒸気暴露及び大気中で従来行ってきた環境試験を実施して影響を調査する。これまでの研究結果から、極薄アルミ表面層の効果は、銀表面層を水蒸気と接触させないことに起因するとした仮定を立てているので、それについて確認することにより、高い環境耐性を付与した銀薄膜開発のための知見を得る。
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Research Products
(16 results)