2019 Fiscal Year Annual Research Report
New Ultrasonic Thermometry Based on Reflectivity Measurements and Its Application to Materials Processing Monitoring at High Temperatures
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19H02477
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
井原 郁夫 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (80203280)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松谷 巌 東京電機大学, 理工学部, 准教授 (00514465)
鎌土 重晴 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (30152846)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超音波サーモメトリ / 高温材料 / 非破壊計測 / 反射率 / 温度プロファイル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「材料加工のIoTに資する革新的な非破壊計測・評価法」の創成に関するもので、加熱材料の界面や内部の温度プロファイルならびに材料特性・挙動を定量的かつリアルタイムで計測・モニタリングするための新規な超音波法(反射率援用超音波サーモメトリ)を開発し、その有効性を実証することを目的とする。このような革新的計測手法の開発により、これまで知り得なかったプロセス中の不確定情報の非破壊・定量的モニタリングの実現を目指す。 R1年度においては、これまでに研究代表者が培ってきた超音波サーモメトリによる温度プロファイリングに関する知見を踏まえて、従来の超音波温度同定手法の問題(加熱面の状態変化に起因する測定結果の不安定性、解析に用いる初期条件や熱物性値の影響)を定量的に調べ、それを克服するための対策について検討した。また、高温超音波計測に適した高温用圧電探触子とカプラント(探触子と測定対象物との間に挿入する超音波伝達媒体)についても実験により具体的に検討した。主な実施事項は次のとおりである。 (1)力学的・熱的境界条件の異なる種々の超音波反射モデルを構築し、それらの反射波を理論的に予測し、境界条件変化が温度同定に及ぼす影響を精査した。具体的には測定対象の超音波反射面の状態をパラメータとして、超音波パルス波伝播時間の誤差が温度分布に与える影響を定量的に調べ、その軽減策を提案した。また、境界条件による反射波の変形(歪み)の理論的に予測し、その影響を系統的かつ定量的に調べた。さらに、計算に用いられる熱拡散率の温度依存性が温度同定値に及ぼす影響や初期条件の影響について定量的に調べた。 (2)高温探触子を用いた超音波パルスエコーを実施するための第一ステップとして、市販の薄膜高温センサを購入し、その適用可能性について実験により調べた。これらの結果は、次年度の高温実験において有益な知見となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超音波パルスエコー法を駆使した超音波サーモメトリを高温材料に適用するためには、(1) 従来の超音波温度同定手法の問題(加熱面の状態変化に起因する測定の不安定性、解析に用いる初期条件や熱物性値の影響)を定量的に調べ、それを克服するための対策を講じること、(2) 高温超音波計測に適した高温圧電探触子を適材適所の観点から活用すること、が不可欠である。 R1年度は超音波パルスエコー法に及ぼす裏面状態の影響について検討した。まず、材料裏面に薄層を有する超音波伝達系を考え、反射率の周波数スペクトルに基づいてパルスエコー波形を予測した。次に、その予測波形とFEM解析結果を比較することで理論予測の妥当性を確認した。さらに、超音波パルスエコー法に基づく超音波サーモメトリを実施する際の温度測定に及ぼす薄層の影響とその軽減策を提案した。これにより超音波サーモメトリの適用における裏面の影響を定量的に把握することができた。また、当該手法(超音波法と差分解析とのハイブリッド手法)の汎用性を踏まえ、差分解析で使用される材料定数や初期条件が温度同定値に及ぼす影響を定量的に明らかにした。このようにR1年度の所期の目標の一つは概ね達成できた。 また、本研究に関わる様々な高温材料の超音波計測実験を効果的に実施するためには、高温探触子を用いた安定的かつ高精度な超音波パルスエコー計測の実現が不可欠となる。本年度はそのための第一ステップとして、薄膜高温センサを購入し、これを合金鋼の表面に接着し、200℃以下の加熱状態でのその適用可能性について実験により調べた。加熱にともなう反射波形の変化と超音波伝播時間の変化を定量的に調べ、当該センサの有用性と限界を明らかにした。これらの結果は、次年度の高温実験において有益な知見となる。 これらのことから当該年度における研究は概ね順調に進展したと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
R2年度は、高温場の超音波計測のためのシステム構築と定量的非破壊評価のための解析手法の開発の二つを実施する。 (1)ロバストな高温超音波計測システムの開発 高温材料の複素反射率の空間・時間応答の高精度測定を実現するために、当該年度では、(a)高温薄膜圧電センサの活用、(b)レーザ超音波法の活用、を検討する。まず、200度に耐える高温薄膜圧電センサを導入し、そのパルスエコ計測における高温適用性を詳細に調べる。具体的には、対象物への設置(塗布)方法の検討、温度依存性、熱衝撃の影響、熱疲労の影響、保護材の有無による薄膜センサの温度勾配の影響について検討し、反射エコー波形の安定性の観点から当該センサの有用性と適用限界を見極める。同様の実証実験を500度用高温センサについても実施する。これらの結果に基づいて、複素反射率に及ぼす加熱面の熱的および機械的境界条件の変動の影響を定量的に調べる。次いで、レーザ超音波法の活用について検討する。ここでは、前年度に購入した高速パルスレーザを利用した高温材料ならびに加熱界面の複素反射率の非接触測定について実証実験を実施する。 (2)逆問題設定と解析法の開発 加熱界面の熱的境界条件、力学的境界条件、材料特性の3者はいずれも反射率に影響を及ぼす因子であることから、反射率を指標とする逆問題を設定することで、これら3者のいずれかを順次同定することが原理的に可能である。これを実施するために、本研究では反射率の入射角・周波数依存性を駆使したマルチステップ逆解析を模索する。これはこの逆問題解析における最も大きな課題である解の一意性の欠如を克服するために検討するものである。この手法に先立って種々の境界条件での複素反射率の系統的変化を網羅したデータベースを構築するために、その理論計算と順解析を行う。これには適宜、有限要素法を利用した波動伝播シミュレーションを活用する。
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Research Products
(16 results)