2019 Fiscal Year Annual Research Report
Design of Protective Rust Layer on Carbon Cteel Considering Cathodic Reduction Behaviour
Project/Area Number |
19H02479
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山下 正人 大阪大学, 工学研究科, 招へい教授 (60291960)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花木 宏修 大阪大学, 工学研究科, 招へい准教授 (20336829)
藤本 愼司 大阪大学, 工学研究科, 教授 (70199371)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 炭素鋼 / 鉄さび / 大気腐食 / 防食 / カソード還元 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会資本鋼構造物は腐食しやすく、SDGsの強靭なインフラ構築のためにも防食が重要である。鋼材の腐食で「鉄さび」を生じるが、鉄さびが還元されると腐食が加速すると考えられる。本研究は鉄さび中に非鉄金属イオンを導入することで還元されにくいさびを育成し鋼材の腐食を抑制することを指向しており、社会資本の長寿命化に寄与する新規な防食法の基礎を作る点で重要であると考える。研究実績を報告する。 ①発錆鋼材のさび層の防食性改良:さびを有する鋼板表面に、非鉄金属イオンを作用させ腐食促進試験を行いさび層の改質を試みた。その結果、非鉄金属イオンによりさびの形態が変化しさび層が還元されにくい結晶構造に変化した。また、電気化学測定により、ドープしたイオン種ごとにカソード還元挙動に及ぼす影響が異なることや、非鉄金属イオンの効果により鉄鋼のカソード反応が抑制され鋼材の腐食速度が低下することが明らかとなった。 ②酸性環境におけるさび層の防食性改良:社会インフラである発電所は環境負荷低減のために排ガス処理設備を有しているが、排ガスの酸性環境における鋼材の耐食性を高めるため鉄さびの改質を試みた。その結果、Niイオン含有樹脂を鋼材に被覆すると、生成するβ-FeOOHの結晶構造が単斜晶系に変化することがX線構造解析や計算機によるシミュレーションで明らかとなった。このさび構造はカソード反応を低減するなどさびの防食性を高めることが認められた。 ③非鉄金属イオン含有樹脂を被覆した鋼材の大気腐食試験の開始:海浜環境の厳しい腐食条件下でさび層の改質を試みるため、非鉄金属イオン含有樹脂を被覆した鋼材等の大気暴露試験を開始した。 ④発錆鋼材の電気化学的還元特性調査:さびが生成した鋼板のカソード分極を行った結果、さび層の還元反応が酸素還元反応よりも速いカソード反応の主体を担うことや酸素還元反応の加速につながることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鉄さびの構造に鉄以外の金属元素を導入することで、還元されにくい(=酸化剤として作用し難い)さびを設計し育成することを目的として研究を開始したが、まずはすでにさびている鋼材のさび層にMg, Al, Cu, Niの非鉄金属イオンを作用させたところ、カソード反応のみならずアノード反応が抑制されることを明らかにした。この知見は、本研究成果が劣化した社会インフラ鋼構造物の長寿命化につながる可能性を示すものである。 また、厳しい腐食環境である酸性環境においても、鉄さびの改質により鋼材の耐食性向上効果が得られることを解明した。特に、生成する鉄さびにNiイオンを作用させることによりさびの結晶構造を変化させることが可能であり、この知見は火力発電所などのエネルギー分野のインフラにおいて環境負荷を低減する排ガス処理に用いられる鋼材の腐食低減につながる可能性を見出した。 さらに、研究を推進するために、塩化物飛来環境である厳しい海浜腐食環境におけるさび層改質を検討する目的で大気暴露試験を開始した。このことは、貴重な自然腐食環境における貴重なデータの取得につながる可能性を高めるものである。 なお、さび層を有する鋼材の電気化学的還元特性調査に着手し、さび層の還元挙動および同時に進行する酸素還元反応を定量的に評価する方法が確立できた。 以上のことより、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度において、すでに腐食している鋼材のさび層や酸性環境におけるさび層の防食性改良に関する知見が得られ、大気腐食試験の開始およびさび層を有する鋼材の電気化学的還元特性調査によるカソード還元挙動の定量的な評価方法が確立できたことから、今後の研究について以下の推進方策が指摘できる。 ①大気暴露試験により生成した種々のさび層を有する鋼材のカソード還元挙動の調査を推進し、さび層および大気中の酸素によるカソード反応に及ぼすさび層構造および非鉄金属イオンの影響について研究を推進する。 ②種々の非鉄金属イオンを含有する水溶液環境において、さび層を有する鋼材のカソード還元挙動を調査するとともに、さび層中に非鉄金属イオンがドープされた場合のさび層構造とその還元特性を調査する。さび層の構造を詳細に解明するために、大型放射光施設SPring-8を用いたX線回折やX線吸収微細構造解析の実施を計画する。 ③強靭なインフラ構築のために社会資本鋼構造物の長寿命化に資する新規な防食法の基礎を研究する観点から、防食塗料の画期的な性能向上に繋げるため、防食塗料に非鉄金属イオンを添加することによる防食性向上効果を検討する。
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Research Products
(5 results)