2019 Fiscal Year Annual Research Report
湿潤下その場分光解析によるケイ酸塩物質のハイドレーション・ケミストリーの深化
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19H02487
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
柴田 浩幸 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (50250824)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
助永 壮平 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (20432859)
川西 咲子 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (80726985)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | シリケート構造 / 重合度 / 溶出 / ケイ酸塩物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
ケイ酸塩物質の水和反応と、それに伴う構成元素の溶出メカニズムの解明を目的とし、研究を進めている。 2019年度は、シリケートの重合度の異なる10種のCaO-SiO2を含む鉱物を高温で合成し、得られた鉱物相の粉末の水への溶出挙動を調査した。いずれの鉱物相でも水との接触後5分以内にpHが急激に増加し、その後一定となる傾向が見られた。CaO-SiO2の二元系の鉱物相では、シリケートが単体もしくは二量体の場合にはカルシウムおよびシリコンの水への溶出量が著しく大きかった。一方、六員環や鎖状の構造のシリケートの場合には溶出量が小さいことがわかった。鉱物相のCa2+イオンの一部をMg2+イオンやFe2+イオンなどで置換した鉱物の場合、さらに溶出量が低減することも確かめられた。各種鉱物相に対する一連の溶出試験で得られた結果より、シリケートの重合度が増加するにつれ、カルシウムおよびシリコンの溶出量は低減することがわかった。一方、同じシリケートの二量体構造のランキナイトとカスピディンでは、ランキナイトの方がカルシウムの溶出量が5倍以上大きかった。NMRを用いた解析により、溶出試験後のランキナイトには単体構造のシリケートを多く含むことが確認されたのに対し、F-イオンを含むカスピディンでは二量体のままであることがわかった。両者にはCaOx多面体の構造に差があることから、シリケート構造に加え、CaOx多面体の安定性も水の溶出挙動に寄与することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終目標に掲げているケイ酸物質の構成元素の溶出メカニズムの解明に向け、シリケート構造の大きく異なるケイ酸塩鉱物を合成し、それらの溶出挙動を重合度を指標として概ね整理することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
溶出に伴い鉱物相の表面に形成される変質層に着目し、その形成メカニズムを調査する。バルク形状のケイ酸塩鉱物の溶出試験を行い、表面分析や構造解析を行うことで、変質層の形成状態を調査するとともに、TEMを用いて表面近傍の変質層の形成を確認する。さらに、水中での構成成分の濃度変化を分析し、速度論に基づいた考察を加えることで、溶出メカニズムを解明する。得られた結果はシリケートの重合度等の指標で整理する予定である。
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Research Products
(4 results)