2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Chalcopyrite leaching process using organic aqua regius
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19H02488
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
松野 泰也 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (50358032)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 黄銅鉱 / 有機王水 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、DMSO系有機王水を用い、黄銅鉱の溶解速度に対する酸化剤(塩化銅(Ⅱ))濃度、温度および溶媒依存性を検討した。溶解実験において残渣のICP発光分析を行い、銅、鉄、硫黄、ヒ素および金の溶解量を定量した。黄銅鉱の溶解率は、温度上昇とともに増大するが、120℃をピークに減少することが分かった。金に関しては黄銅鉱に含有されていた量の80%ほどが溶解したが、ヒ素はほとんど溶解しないことが示された。また、非プロトン性有機溶媒である炭酸プロピレンを用い黄銅鉱の溶解性を検討した結果、黄銅鉱は全く溶解されなかったことから、DMSOの硫黄が黄銅鉱の溶解に作用していることが示唆された。 溶解実験において、抽出溶媒を冷却すると、硫黄が析出することが確認された。既存の水溶液系溶媒での黄銅鉱の溶解では、硫黄に起因する不働態が形成され溶解が止まってしまうことが問題となっていたが、有機王水では硫黄が良く溶解することから不働態が形成されないゆえ、黄銅鉱を高速に溶解できることが示された。 黄銅鉱の溶解実験を主として行った100℃でのDMSOの硫黄の溶解度を測定し、100℃にてDMSOに溶解した硫黄が、冷却され過飽和になり析出することが示された。 溶解残渣をXRDにて測定した結果、残渣中の鉄は、主としてパイライト(FeS2)として残っていることが示唆された。これより、有機王水は、銅精鉱中に含まれる黄銅鉱を溶解するが、パイライトは溶解しないことが示唆された。 本年度の成果により、有機王水は黄銅鉱の溶解に有用であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の結果により、有機王水は黄銅鉱中の銅、硫黄および金を高速で溶解することが示された。その一方で、銅精鉱中に含まれるパイライトおよびヒ素は溶解しにくいことが示された。つまり、有用な成分のみを溶解し、その他の成分は残渣に残るゆえ、非常に効率の良いプロセスの構築が可能になることが示唆された。高温にて溶媒に溶解した硫黄は、冷却すれば過飽和になり析出する故、単体で硫黄も取り出すことが可能である。 これらの成果をまとめて、国内学会にて発表し、国際雑誌にも投稿することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、黄銅鉱の溶解にて生成した銅イオンを回収する方法を検討する。 まずは電解採取の可能性を探索する。電解採取できれば、有機溶媒(DMSO)や塩化銅(Ⅱ)は繰り返し使用されるサイクルプロセスとなり、非常に効率的なプロセスを構築することができる。その他、加水や二層分離による銅の回収などについても検討したいと考えている。 さらには、有機王水は、閃亜鉛鉱から亜鉛、硫鉄ニッケル鉱などからニッケルの溶解にも利用できる可能性があり、酸化剤濃度、温度による溶解速度依存性について調べるとともに、溶解反応のメカニズムについて考察したいと考えている。
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