2019 Fiscal Year Annual Research Report
Effect of mechanical interactions between polymers and fluids on flow dynamics of the polymer solution
Project/Area Number |
19H02497
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
日出間 るり 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (20598172)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 洋 神戸大学, 工学研究科, 教授 (90206524)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 高分子の形態 / 流動抵抗 / マイクロレオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,乱流抑制や弾性不安定など低濃度高分子溶液が複雑な流動挙動を示す原因を,流体中の「高分子と流体」間,および「高分子とその周囲の高分子」間に生じる,力学的な相互作用の観点から明らかにすることを目的としている.目的を達成するために,流動場中に浸した高分子に起因する,高分子自体の流動抵抗を測定し,流動抵抗を生じさせる高分子の形態を予測し,この形態をとった場合に,「高分子と周囲の流体」,「高分子とその周囲の高分子」の間にどのような力が働くかを検討する.形態変化の予測は,サイズが大きく可視化可能なDNAにより検証する.さらに数値計算を行い,分子量や剛直性などの性質が異なる高分子に対して,流体中の高分子の形態,流体中の高分子が周囲の流体に与える影響を一般化することを目指している.本研究で得られる知見は,工業的に多用される複雑流体の流動挙動解明といった問題にとどまらず,高分子と周囲の相互作用という,ソフトマターを取り扱う学問分野で長らく問題とされてきたマイクロスケールからマクロスケールをつなぐ階層構造の概念を含むものである. 上記の,概要を踏まえ,2019年度は,実験装置の構築と,高分子流動抵抗の測定を,主な目標として,それを達成することができた.また,流動抵抗測定に使用したポリエチレングリコール(PEG)の分子量は,3種類を試し,測定はほぼ完了した.流動抵抗と,その流動抵抗を生じさせる高分子の形態についても,検討が進んでいる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究全体の目的を踏まえて,2019年度は,以下の項目を達成した. (1)走査型プローブ顕微鏡と自作の流路を組み合わせた装置で,高分子の流動抵抗を測定できる実験システムを構築した.具体的には,走査型プローブ顕微鏡に取り付けたカンチレバーに,ポリエチレングリコールを結合させ,これを,自作の流路の中に浸すことにより,流動場中で生じる,ポリエチレングリコールに起因する流動抵抗を測定した. (2)上記の実験システムを用いて測定した,ポリエチレングリコールの流動抵抗が,ポリエチレングリコールの分子量,または,周囲の流体の粘度,高分子の有無により,どのように変化するのかを測定した.ポリエチレングリコールの分子量は,3種類を試し,測定はほぼ完了した. (3) 流動場中でのポリエチレングリコールの形態を予測し,その形態に由来する流動抵抗を試算した.この試算値と,実験で測定した流動抵抗を比較し,予測した形態の確からしさを検討した.現在のところ,「高分子と流体」間の流動抵抗のモデル化については,測定値の解析からは確からしい値を得たと考えている. 以上の観点から,おおむね順調に進展していると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究全体の目的達成のために,2020年度は,以下を行う. (1)高分子に由来する,流動場での力の発生について,「高分子とその周囲の高分子」の間の流動抵抗のモデル化を目指す.「高分子と流体」間の流動抵抗のモデル化については,2019年度にほぼ達成したが,周囲の流体にもポリエチレングリコールが存在すると,「高分子と流体」間の場合とは様子が違うようであった.そこで2020年度は,流動場中での高分子の絡まり合いが,高分子の流動抵抗に与える影響を調べる. (2)上記(1)について,ポリエチレングリコールの分子量を変えた場合のモデル化も検討する. (3)流動場中の高分子形態のモデルを検証するため,DNAの流動抵抗計測について検討する.
|