2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Environmental Catalysts using Topotactic Transformation
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19H02514
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
細川 三郎 京都大学, 実験と理論計算科学のインタープレイによる触媒・電池の元素戦略研究拠点ユニット, 特定准教授 (90456806)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 環境触媒 / ペロブスカイト構造 / 酸素貯蔵材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境触媒材料は高温加湿雰囲気下に曝されることが想定されるため,優れた触媒活性に加え,高い熱的・化学的安定性の付与が必要不可欠である.これまでに,Sr-Fe系複合酸化物が高い酸素貯蔵能を有していることを見出し,その酸素吸蔵・放出過程では,カチオンサイトの位置の変化を伴わずに格子酸素が可逆的に挿入・脱離するトポタクティックな挙動を示すことを明らかにしている.そこで,本研究では遷移金属複合酸化物の高い酸素放出特性および構造情報を高効率に活用することを試み,高い活性と熱的・化学的安定性を併せ持つ新規環境触媒材料の開発を目指す. Sr-Fe系複合酸化物はディーゼルエンジン車用のNOx吸蔵材料として有効に機能することを見出しており,31年度ではNOx吸蔵時の反応挙動について検討した,NOx吸蔵反応ではNOをNO2に酸化する過程が含まれており,そのNO酸化挙動をミリ秒オーダーでの測定が可能なin situ時分割X線吸収微細構造測定(DXAFS)を用いて分析した.その結果,NOとの反応によりSr-Fe系複合酸化物の格子酸素の放出が起きていることを見出した.反応モデルを用いた解析から,Sr-Fe系複合酸化物上でのNO酸化は固体内での格子酸素の移動過程が律速であり,Sr3Fe2O7-dの方がSrFeO3-dよりも小さな活性化エネルギーを示すことを明らかにした. これまでに,Sr-Fe系複合酸化物担持Pd触媒はガソリンエンジン車用の触媒材料として利用できることを見出していたが,化学的安定性が乏しいという問題点を抱えていた.そこで,31年度は,熱的・化学的安定性が高いSr-Ti系複合酸化物を担体に用いたPd触媒の検討を行った.その結果,Sr-Ti系複合酸化物Pd触媒はSr-Fe系複合酸化物を用いた触媒よりも優れた触媒性能を示すことを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
31年度はSr-Fe系複合酸化物の格子酸素の反応性および新規環境触媒材料の構築を目指し,研究を進めた.「実績の概要」に示したように,Sr-Fe系複合酸化物によるNO酸化に対して,格子酸素が反応に関与していることを本年度明らかにすることができ,固体内部の格子酸素移動能が反応に大きな影響を及ぼしていることを見出した.すなわち,ペロブスカイトユニットの積層構造が異なるSrFeO3-dとSr3Fe2O7-dの格子酸素移動能を評価したところ,Sr3Fe2O7-dの方がSrFeO3-dより優れていた.Sr3Fe2O7-dは SrFeO3-d層とSrO層が交互に積層した構造であり,その結晶構造に起因する格子酸素の拡散特性が移動能に反映しているものと考えられる.Sr3Fe2O7-dおよびSrFeO3-dはいずれもトポタクティックな酸素放出が起こるが,その格子酸素移動能が結晶構造に依存しているという実験事実を得たことは学術的に意義深く,初年度の研究成果としては概ね順調に進展していると判断される. Sr-Fe系複合酸化物担持Pd触媒は高い熱的安定性はあるものの化学的安定性が乏しいという問題点があった.この問題を克服すべく Sr-Ti系複合酸化物の利用を試みたところ,耐熱性および耐水性に優れた触媒材料の創製に成功した.この効果に関しては,複合酸化物とPdの界面に特異な相互作用が働いていることを推察している.初年度にSr-Fe系複合酸化物に置き換わる材料を見出せたことは,当初の計画以上に進展した成果といえる.
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Strategy for Future Research Activity |
ペロブスカイト型Sr-Fe系およびSr-Ti系複合酸化物(SrFeO3-d・Sr3Fe2O7-d・SrTiO3・Sr3Ti2O7)への第三成分(Ba, La, Mn, Ni, Co)添加を検討する.BaおよびLa添加は格子体積拡大による格子酸素の拡散速度向上を期待しており,Mn・Ni・Co添加はFeおよびTiサイトへのredox能の付与を期待している.特に,Sr-Fe系複合酸化物への異種遷移金属添加では,Feサイトの電子状態制御を試み,高い格子酸素移動能の発現に重要な電子的因子を明確にする.さらに,これまでの予備的な検討により,還元剤の種類が格子酸素放出に対して大きな影響を及ぼしていることを見出している.そこで,還元剤(H2, NO, CO)が格子酸素脱離に及ぼす影響について,in situ XAFS等を用いて明確にする予定である. Sr-Ti系複合酸化物は高い耐熱性と耐水性を兼ね備えているが,現状では酸素貯蔵能は乏しい.そのため,Tiサイトへの遷移金属添加によりredox能を付与させ,自動車触媒として有効な酸素貯蔵能の発現を目指す.また,Sr-Ti系複合酸化物への遷移金属添加により,担体の電子状態が担持金属の構造に与える影響も明らかにする.また,Sr-Ti系複合酸化物担持Pd触媒では,複合酸化物とPd種の間に特異な界面構造が形成されていることが考えられる.そのため,その界面構造をSrサイトへの異種元素置換(BaやLa)により微調整し,さらに高い活性の発現を目指す.自動車排ガス浄化反応に対しては,in situ FT-IR等の「その場」分光解析法を駆使して,排ガス浄化反応に対する反応機構への担体効果を明確にする予定である.
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Research Products
(11 results)