2019 Fiscal Year Annual Research Report
固固界面制御と Operando 計測による新規触媒の創成
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19H02515
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 庸裕 京都大学, 工学研究科, 教授 (70201621)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 触媒 / Operando / 固固界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
自動車排ガス中の未燃焼の炭化水素や一酸化炭素の酸化および窒素酸化物の還元を起こす三元触媒の貴金属元素使用量の低減あるいは貴金属からの脱却は喫緊の課題である.申請者の研究グループでは,微量の貴金属添加,あるいは複数の遷移金属元素の共存により,担持金属種および金属酸化物担体の酸化還元挙動を制御し高活性を示す新規な三元触媒系を見いだしている.三元触媒は温度や排ガスの酸素濃度の変化に応じて触媒活性や触媒そのものが刻々と変化する.特に卑金属系触媒の開発に当たっては,担持された卑金属元素の酸化還元状態は極めて容易に変化すると予想され,触媒作用を理解するには,実際に活性を発現している際の担持金属種を分析することが不可欠である. 本研究では,X線吸収分光法による担持金属種の分析と赤外吸収分光法による吸着分子種の同時測定により,卑金属系触媒の一種であるCuNi触媒とCuNi-Fe触媒の活性の違いに着目して検討を行った.これらの触媒に対して,C3H6, NO, O2を流通させ,室温付近から加熱すると,X線吸収スペクトルからCuNi触媒に対してFeを添加することでCu+種が増加することが明らかになった.また,同時に測定した赤外スペクトルから,Feを添加するとアセテート種およびNO還元反応の中間体と考えられているイソシエネート種が昇温に応じて速やかに減少した.これはFe添加がこれらの中間体の酸化反応に有効なCu種の生成を促進したためであると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は低温領域で三元触媒活性を示す卑金属触媒の探索を進めた.Cu-Ni触媒に第三成分を添加した三元系触媒の触媒活性を評価した結果,Cu-Ni触媒にFeを添加した系が高い活性を示すことを見いだした.触媒活性評価の模擬排ガスとしてプロピレン,一酸化炭素,一酸化窒素,酸素の混合ガスを利用している.Cu-Ni触媒はプロピレンの転化率の低さが問題であったが,Feの添加によりプロピレンの転化率が向上し,これに伴い,一酸化窒素の還元効率も向上することを見いだした.また,繰り返し昇温反応を行った場合も安定した活性が示すことを見いだした.この昇温反応活性は同条件で前処理を行ったPt触媒に匹敵するものであった. さらに,CuNi触媒とCuNi-Fe触媒の活性の違いを明らかにするために,これらの触媒に対して化学量論的に酸化還元を起こす濃度比のC3H6, NO, O2を流通させ,室温付近から昇温させながら反応を行いながら,X線吸収スペクトルおよび赤外スペクトルの同時測定を行った.X線吸収スペクトルからCuNi触媒に対してFeを添加することで昇温反応時に一価のCu種が増加することが明らかになった.また,赤外スペクトルからFeを添加すると,触媒表面に吸着したアセテート種およびNO還元反応の中間体と考えられているイソシアネート種が昇温に応じて減少しやすいことが明らかになった.すなわち,Fe添加がこれらの中間体の酸化反応に有効なCu種の生成を促進したことを見いだした.
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Strategy for Future Research Activity |
X線回折パターン,STEM-EDX,X線吸収スペクトルなどからCuNi触媒は一度酸化されても合金化されるという興味深い特徴を有していることがわかっている.しかし,予備検討においてCuとNiがそれぞれ単独で担持された触媒をタンデム配置にすることでCuNi触媒に近い触媒活性を示す場合があることを見いだした.このことは三元触媒反応において,CuNi合金触媒はいわゆるアンサンブル効果やリガンド効果とは異なり,原子レベルで個別に触媒作用を示しており,必ずしも合金状態である必要はない可能性を示唆している.そこで,卑金属触媒をタンデム配置にすることによって複雑な三元触媒反応のそれぞれの反応を部分的に担い,全体として高い浄化効率を示す触媒系を網羅的に探索する.一方,合金あるいはタンデム配置によって触媒作用を示す場合のいずれについても,触媒そのものの変化と触媒活性の間に密接な関係があることは明らかであり,Operando測定は依然として重要である.今年度,X線吸収スペクトル測定と同時に実施した赤外スペクトル測定は拡散反射型を用いているため,吸着分子種の定量性は十分ではなく,触媒反応中に変化した担持金属の各化学状態の量と直接結びつけることは容易ではない.そこで,次年度においては当初の計画通り,透過型の赤外スペクトル測定装置をX線吸収分光法と組み合わせることにより,より定量的に,実際に活性を発現している際の担持金属種の分析を実施する予定である.
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Research Products
(2 results)