2020 Fiscal Year Annual Research Report
軽油相当のバイオ燃料を大量生産可能な高活性型アルカン合成関連酵素の創出
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19H02521
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新井 宗仁 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (90302801)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 勇樹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (90444059)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | バイオ燃料 / 酵素 / 酵素デザイン / タンパク質工学 / 進化分子工学 / 理論的設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
シアノバクテリアは、アシルACP還元酵素(AAR)とアルデヒド脱ホルミル化オキシゲナーゼ(ADO)という2つの酵素を用い、光合成で軽油相当のアルカンを合成できることから、地球温暖化の防止に有効な再生可能バイオエネルギーの生産源として注目されている。しかし両酵素の活性は低いため、高活性化が必要である。そこで本研究では、3通りの方法でこれらの酵素活性の向上を目指している。2020年度は次の研究を行った。 (1) 進化分子工学実験: AARの生成物であるアルデヒドの量に応じて発光する大腸菌を用い、発光量が増加したAAR変異株を得た。これらのAAR変異体のアミノ酸配列、発現量、酵素活性を定量した結果、AARの高活性化変異体を得ることができた。 (2) 網羅的変異解析: これまでに得たADOの変異体データベースから、高活性化した変異を多重に組み合わせた結果、さらに高活性化した変異体が得られた。特に、発現量を向上させる変異を追加すると、大腸菌内でのアルカン合成量が向上した。 (3) 理論的設計: AARはADOと結合してアルデヒドを効率的に受け渡す。そこで両者の結合を強化しうるADO変異体を、最先端のタンパク質設計用ソフトウェアRosettaで設計した。その結果、両者を共発現した大腸菌内でアルカン合成量が大きく向上した。
上記の他に、次の研究成果も得た。①光合成細菌においては、硫化水素センサータンパク質SqrRにヘムが結合することによってその機能が制御されることを明らかにした。②NMR分光法を用いてタンパク質の構造ダイナミクスを解析する手法についての総説を執筆した。③Rosettaソフトウェアを用いることにより、アレルギーやがんなどに関わるタンパク質間相互作用を阻害するタンパク質を設計した。④タンパク質の立体構造形成機構を統計力学理論で解析する手法の開発を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、AARとADOの高活性化に向けて3通りのアプローチで取り組んでいる。いずれのアプローチにおいても着実な進展がみられている。2つ目のアプローチである網羅的変異解析では、多重変異の導入によって高活性化したADO変異体が得られた。また、3つ目のアプローチである理論的設計では、AARとADOの結合を強化することを目指した変異体の設計によって、アルカン合成量の向上がみられている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も3通りのアプローチにより、当初の予定通りに研究を進めていく予定である。具体的には、進化分子工学実験では、ADOの高活性化変異体の設計を目指した実験を進めていく。
網羅的変異解析では、これまでにADOに対して実施したときと同様の方法で、AARに対する様々なアミノ酸置換変異体のデータベースを構築した後、それらを組み合わせて高活性化したAAR変異体を作製する。
理論的設計では、まずはAARとADOの結合を強化させた変異体の設計を引き続き行う。また、2019年度に開発した高活性化法などを用いて、ADOとAARの高活性化を行う。
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Research Products
(18 results)