2019 Fiscal Year Annual Research Report
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19H02524
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
田丸 浩 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (50324554)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 一本鎖抗体 / キンギョ / ゼブラフィッシュ / ファージディスプレイ / scFv |
Outline of Annual Research Achievements |
当初予定していたキンギョのゲノム解読については、2019年6月に日本の研究グループらによって米国科学誌Science Advances(26 Jun 2019:Vol.5, no.6, eaav0547 DOI:10.1126/sciadv.aav0547)に報告された。その内容は、ゼブラフィッシュの遺伝子数は約2万6千個であったのに対して、日本で古くから飼育されている品種のワキン(和金)では、その遺伝子数は約7万個で一般的な魚に比べて非常に多く、約1400万年前の祖先の段階で染色体の数が2倍になる変化が起きた結果、キンギョに含まれる遺伝子も倍増していた。そこで本研究では、本ゲノム情報をリファレンスとして今後の研究を行った。 ゲノム編集によるゼブラフィッシュでの組換えタンパク質発現系の構築では、これまでに当研究室で開発したゼブラフィッシュ由来Ef1-αプロモーターを基にして、それをタンデム化した組換えタンパク質発現用プラスミドを開発し、シングルのプロモーター発現に比べて約10倍の組換えタンパク質を発現させることに成功した(特許出願済み)。 キンギョ(スイホウガン)を免疫動物として、水泡液中のB細胞からmRNAを抽出し、cDNAを合成して次世代シークエンサーを用いてIgMの配列情報を網羅的に解析した。すなわち、免疫前後の水泡液をサンプリングして次世代シークエンサーによるRNA-Seqを行った。その結果、免疫後の67遺伝子に2倍以上の発現上昇が見られ、その中にイムノグロブリン重鎖および軽鎖の遺伝子も含まれていた。さらに、免疫後のイムノグロブリン重鎖および軽鎖の遺伝子からcDNAを合成し、それらを鋳型にPCRによってscFvを合成後、ファージライブラリ化した。抗原を用いたパニング後にスクリーニングされたポジティブクローンにおいて、抗原特異的で親和性の高いscFvを取得することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゼブラフィッシュ発現系では、ゲノム編集による遺伝子発現セットの導入を想定していたが、遺伝子発現セットをタンデム化したプラスミドによって組換えタンパク質の発現量を向上させることができた。これによって、本研究で標的とするGPCRの一種で、大腸がんバイオマーカーであるhLGR5を発現させる目途が立った。 キンギョについては全ゲノム解読が完了したため、これをリファレンスとして、特異的抗体の産生のメカニズム解明が行えるようになった。また、スイホウガンを用いた抗体情報の取得において、次世代シークエンサーを組み合わせた網羅的な一本鎖抗体遺伝子の解析も可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲノム編集技術によって、ゼブラフィッシュ発現系を用いてバイオマーカーであるhLGR5のさらなる発現増量を目指したい。すなわち、2019年度に開発したタンデムベクターをゲノム編集技術によってゼブラフィッシュの特定箇所のゲノム上に導入することで、さらなる発現効率の向上を目指す。 キンギョについては、スイホウガンを用いて免疫前後の詳細な抗体遺伝子の発現パターンの網羅的な解析をファイージライブラリおよびscFvの抗原との親和性解析を行うことで、簡便・迅速な一本鎖抗体の取得法を確立したい。
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