2020 Fiscal Year Annual Research Report
組換え昆虫細胞によるアデノ随伴ウイルスベクター生産のための最適分子設計
Project/Area Number |
19H02525
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山地 秀樹 神戸大学, 工学研究科, 教授 (40283874)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 生物化学工学 / 昆虫細胞 / 組換えタンパク質生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,宿主として昆虫細胞を用いるもののバキュロウイルスを使用しない,アデノ随伴ウイルス (AAV) ベクターの新たな生産技術の構築を検討する.非増殖性の組換えAAVベクターは,AAVの2つのITR (inverted terminal repeat) の間に挿入した治療用遺伝子とAAVの調節タンパク質Repおよびキャプシドタンパク質Capの遺伝子を宿主細胞に導入し発現させると生成する.本研究では,Trichoplusia ni由来のBTI-TN-5B1-4 (High Five) を宿主として,プラスミドベクターを用いて血清型が2型のAAV (AAV2) のRep・Capタンパク質の遺伝子を導入し,Rep78,Rep52,VP1,VP2,VP3等のAAVタンパク質の昆虫細胞における発現について検討している.昨年度までに,Rep・Cap遺伝子の上流に昆虫細胞で機能するプロモーターを配置するとともに,もう一つのプロモーターを含む人工イントロンをRep・Cap遺伝子に挿入することにより,AAVのRep・Capタンパク質の発現レベルを調節できることを一過性発現で明らかにした. 今年度は,まず,High Fiveの細胞内で発現させたRepタンパク質が機能しており,2つのITR間のレポーター遺伝子が複製されることを示した.また,2つのITR間のレポーター遺伝子とRep・Cap遺伝子をHigh Fiveにコトランスフェクションすることにより,109 vg/ml程度のAAVベクターが生成することを確認した.さらに,ZsGreen1遺伝子をレポーター遺伝子とするAAVベクターを作製し,哺乳動物細胞HEK293Tに添加したところ,細胞が緑色蛍光を発したことから,作製したAAVベクターはHEK293Tに感染し,レポーター遺伝子であるZsGreen1遺伝子が発現することがわかった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度,2つのITR間に挿入したレポーター遺伝子とRep・Cap遺伝子をHigh Fiveにコトランスフェクションすることにより,AAVベクターが生成することを確認した.また,ZsGreen1遺伝子をレポーター遺伝子とするAAVベクターを作製し,HEK293Tに添加したところ,細胞が緑色蛍光を発したことから,作製したAAVベクターがHEK293Tに感染し,レポーター遺伝子であるZsGreen1遺伝子が発現することを示した.これらのことから,バキュロウイルスを用いなくとも,昆虫細胞を宿主としてAAVベクターを生産可能であることを明らかにできた.
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き,High Fiveを宿主として,プラスミドベクターを用いてAAV2の調節タンパク質Repおよびキャプシドタンパク質Capの遺伝子を導入し,Rep78,Rep52,VP1,VP2,VP3等のウイルスタンパク質の昆虫細胞における一過性発現について検討する.Rep・Cap遺伝子発現用プロモーターの比較,新たな人工イントロンやプロモーターの利用,Rep・Cap遺伝子のコドンの改変などについて検討し,Rep78・Rep52およびVP1・VP2・VP3の発現レベルがそれぞれ最適となる人工イントロンやプロモーターの組み合わせを決定する.また,レポーター遺伝子としてZsGreen1遺伝子をAAVの2つのITRの間に挿入したプラスミドベクターとRep・Capタンパク質発現用プラスミドをHigh FiveにコトランスフェクションしてAAVベクターを生産し,生産性等の比較検討をおこなう.作製したAAVベクターをHEK293Tなどのヒト細胞に添加し,蛍光顕微鏡観察やフローサイトメーターなどによりレポーター遺伝子の細胞への導入および細胞での発現を評価する.さらに,AAVベクターを含む試料を密度勾配遠心分離法,動的光散乱法,透過型電子顕微鏡 (TEM) 観察等で分析し,得られたAAVベクター粒子の特性を評価する. また,人工イントロンやプロモーターの組み合わせが適切なRep・Cap遺伝子発現用のプラスミドを薬剤耐性遺伝子とともにHigh Fiveにトランスフェクションし,対応する薬剤の存在下で培養することにより,Rep・Cap遺伝子を安定発現するパッケージング細胞やプロデューサー細胞の作製について検討する.得られた組換え細胞におけるRep・Capタンパク質の発現やAAVベクターの生産を確認する.必要に応じて,AAV2以外の異なる血清型のAAVベクターの作製についても検討をおこなう.
|