2020 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanistic investigation of dynamic metal nanoparticles
Project/Area Number |
19H02535
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
今岡 享稔 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (80398635)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / サブナノ粒子 / 電子顕微鏡 / 原子動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
化学は反応によって熱力学的に安定で分離可能な分子や固体などの化合物を得ることを基盤として発展してきた。しかし近年、触媒等においてはその場で形成された原子や分子の動的な集合・解体の研究が重要視されている。本研究では、同種や異種の金属二量体および三量体の形成および解離のダイナミクスを、元素を特定しながら原子レベルの解像度で直接可視化することを実現した。 グラフェンナノプレートに、アークプラズマ蒸着(APD)法を用いて、遷移金属原子(Au、Ag、Cu、Pt、Pd)を蒸着した。同種の原子の蒸着サンプルに加えて、異種原子の共蒸着サンプル(Au-Ag, Au-Cu, Ag-Cu, Au-Ag-Cu)も同様にAPD法を用いて作製した。Au-AgのADF-STEM像では2種類の異なる輝度レベルの原子が共存していることが確認された。同様にAu-Ag-Cuでも3種類の原子が輝度で識別できていることが確認された。観測された原子の輝度はAu, Ag, Cuの3種類の原子に限ると原子番号(Z)の1.28乗に比例していることが判明し、これはADF-STEMの電子線シミュレーションに基づいた散乱振幅の計算結果に基づく1.20乗という依存性と良い一致を示している。 確立された原子動画における元素識別法を用いて、連続的なSTEMの動画撮像に基づいた同種、異種の金属二量体、三量体の観察とその構造解析を試みた。その結果、結合形成だけでなく、二量体が単原子に分解される様子も観察された。このような異種金属結合の開裂・形成の瞬間をビデオで直接観察した例は初めてである。今回観察された各二量体の原子間距離に着目したところ、第一原理計算で推定された同種および異種金属二量体の結合長と一致する構造であることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで原子像のビデオ撮影と同定は、走査型透過電子顕微鏡(STEM)とZコントラスト原理に基づく元素同定を組み合わせて行われた。低い電子線量でも動く原子を識別できるようになった結果、AuAg、AgCu、AuAgCuなどの短寿命分子を直接可視化することに初めて成功した。 当初計画では粒子内部原子の全体的な動きから特性を読み取ることを目的としていたが、新たな解析法を確立することで原子ひとつひとつの識別にも成功した。これは当初計画を上回る成果であり、Nature Communications誌に掲載予定である(2022年)。
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Strategy for Future Research Activity |
原子分解能走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて、サブナノスケールの物質特有の原子動態をリアルタイムかつ定常状態として捉えることに成功している。これと組み合わせる画像処理・解析技術を開発することで、全く新しいナノ物質動的構造解析手法の自動化を目指す。例えば原子の座標トラッキングに基づく構造の分類、さらには原子の種類識別までを自動で行えることを目指す。
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Research Products
(5 results)