2021 Fiscal Year Annual Research Report
光共振器中の超伝導体ジョセフソン接合におけるテラヘルツ帯レーザー発振の実証
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19H02540
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
辻本 学 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (20725890)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柏木 隆成 筑波大学, 数理物質系, 講師 (40381644)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高温超伝導体 / 固有ジョセフソン接合 / 超伝導量子デバイス / テラヘルツ波 / レーザー発振 |
Outline of Annual Research Achievements |
光共振器中の超伝導体ジョセフソン接合におけるテラヘルツ帯レーザー発振の実証に向けて、当該年度は銅酸化物超伝導体Bi-2212単結晶メサの断面形状が固有ジョセフソン接合列の同期発振特性に与える影響を調べた。断面形状の台形歪みをコントロールするプロセス技術を確立し、非線形振動子集団の固有振動数分布を変化させながらテラヘルツ発振特性を調べた。自己発熱による局所温度上昇を最小化する工夫として、Bi-2212メサを高熱伝導性エポキシ樹脂に埋め込むプロセス手法を導入した。複数素子を使った系統的な実験の結果、接合列の自発的同期状態と非同期状態との間の不連続な相転移を観測することに成功した。この結果は従来型ジョセフソン接合アレイの同期転移現象との類推でよく説明できる。また、固有振動数分布幅を意図的に小さくすることで(最小1.6%)、より広い可変周波数範囲のテラヘルツ発振を得ることができた。当該年度の研究実施によって、高温超伝導体を用いた可変かつ高効率な超伝導テラヘルツ光源の実現に繋がる知見を得ることができた。 得られた研究成果は、アメリカ物理学会のPhysical Review誌に原著論文として投稿した。5月16日現在査読中である。関連する研究成果の一部は、米国物理学協会のJournal of Applied Physicsに原著論文として発表した。研究実施で得られた成果に関して、国際学会で1件、国内学会で6件の口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施期間の3年度目である当該年度は、2年度目に得られた実験結果を現象論的に理解することを目標として、既存の数学的概念を応用した解析モデルの構築及び数値計算に注力した。非線形振動子の集団運動を記述する蔵本モデルを用いて実験結果をフィッティングした結果、固有ジョセフソン接合列の平均場結合強度を定量することに成功した。実験と計算が高い精度で一致することがわかり、当初計画を前倒しして原著論文の執筆を開始した。共同研究者との綿密な議論を重ね、実験結果に対する理解を深化することができた。以上のように当該年度に行った研究は次年度以降の研究の発展につながるものと確信しており、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、超伝導レーザー発振実験で用いる共振器の開発を行う。具体的には、対面ミラーからなるファブリペロー型光共振器を設計する。高いQ値を持つファブリペロー型を採用することで電子対のトンネル確率を共振器の減衰率より高め、超伝導体ジョセフソン接合のレーザー発振を検証する。マイクロ波帯で用いられるマイクロストリップ型共振器との結合実験についても検証を進める。研究代表者らによる最近の研究によって、Bi-2212単結晶メサ構造に導電性金属パッチを取り付けた場合、メサ側壁近傍の電磁界がほとんど影響を受けないことがわかっている。これは従来のマイクロストリップ型共振器とは対照的であり、超伝導体内部で生じている自発的な位相同期状態が周辺環境の変化に対して堅強であることを示している。次年度はこの観点から、内部共振モードを外的に調整する手法として、外部磁場の印加や電気的ノイズ注入の実験を検証し、既存モデルの修正を行いたい。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Experimental validation of a microstrip antenna model for high-Tc superconducting terahertz emitters2021
Author(s)
Genki Kuwano, Manabu Tsujimoto, Youta Kaneko, Kanae Nagayama, Takayuki Imai, Yukino Ono, Shinji Kusunose, Takuya Yuhara, Hidetoshi Minami, Takanari Kashiwagi, and Kazuo Kadowaki
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Journal Title
Journal of Applied Physics
Volume: 129
Pages: 223905-(1-6)
DOI
Peer Reviewed
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