2020 Fiscal Year Annual Research Report
ダイヤモンド量子センサーを用いたハイゼンベルグ限界感度における核スピン検出
Project/Area Number |
19H02547
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伊藤 公平 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (30276414)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 量子センシング / ダイヤモンド中窒素空孔欠陥 / 核磁気共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ダイヤモンド中の窒素空孔(NV)中心を利用した磁場計測において、機械学習やフィードバック制御の利用を検証する。微弱な核スピン磁場に対する感度を、真の量子センサーで期待されるハイゼンベルグ限界のスケーリングに引き上げることを目指す。今年度は、この目標に向けて以下の3点に注力した。 1点目は機械学習による磁場測定データ解析の検証である。従来のフーリエ変換を利用した解析法と、我々が実装したベイズ解析法を交流磁場計測の周波数精度について比較した。その結果、ベイズ解析法でも従来法と同程度の周波数精度を得られることが実験的に確かめられた。さらに、測定パラメータ最適化のフィードバック処理により、感度に約2倍の向上が期待されることが計算により示された。ただし、既存の交流信号測定プロトコルの範疇では、これら技術を利用しても周波数精度スケーリングが向上されないことが確かめられた。加えて、発光強度が低い場合、センサーの読み出し精度が低く、推定値が理想値に収束しないという知見も得られた。 2点目は、電磁石の動作確認である。電磁石を保持するためのステージと高磁場中での電子スピン共鳴に対応可能な広帯域マイクロ波アンテナを設計し、光学測定系に組み込んだ。電磁石によって約0.2Tの磁場を印加しながら、NV中心の共鳴スペクトルの取得に成功した。なお、0.2Tは、NV中心窒素スピンを量子メモリとして用いるために十分な磁場強度である。 3点目は、昨年度検出に成功したプロトンスピンの詳細な調査である。動的核磁気分極法を利用し、プロトンスピン状態の初期化と読み出しを行うことでその量子操作にも成功した。この技術は、核スピンを量子メモリとして応用するために利用できる。プロトンの検出と量子操作に関して得られた知見をまとめた内容を、論文誌Applied Physics Letterに投稿し、採択された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各要素技術の検証が進み、交流信号の測定に対して機械学習を利用するための課題が明らかになりつつあるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
量子メモリを用いた磁場センサーの読み出し精度と向上技術と、高い交流磁場感度のスケーリングを得るための測定プロトコルの開発を行う。 電磁石によりバイアス磁場の印加を行い、窒素核スピンを量子メモリとして利用するための既存プロトコルを実装する。単一NV中心の読み出し精度を高めることで、磁場測定データにベイズ解析を適用する際の課題を回避することを目的とする。量子メモリ動作を阻害するバイアス磁場とNV中心のミスアライメントを精度良く校正するための手法として、高速FPGAを利用し、測定パラメータを適切に選択、フィードバックすることで、NV共鳴周波数を幅広い範囲で高速に探索する方法を検討する。さらに、量子メモリ動作の際の、信号処理自体に機械学習を取り入れ、測定データの最適な重み付けを行うことで、読み出し精度がさらに向上するか検証する。 本研究の対象とした交流磁場計測法では、動作説明や信号解析に、センサー挙動の近似が利用されている。厳密なセンサー挙動を取り入れ、この近似が破れるような奇抜な測定条件における挙動を詳細に検証する。交流磁場計測において、磁場強度、周波数、位相のいずれかで精度スケーリングの変化が得られるか検討する。 これら技術を統合し、プロトンスピンや炭素核スピンの計測を行うことで感度スケーリングが向上するか検証する。
|
Research Products
(6 results)