2019 Fiscal Year Annual Research Report
リズミカルな鞭毛運動を誘起する分子マシナリの力学制御
Project/Area Number |
19H02566
|
Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
西山 雅祥 近畿大学, 理工学部, 准教授 (10346075)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木 俊樹 県立広島大学, 生命環境学部, 教授 (40292833)
今井 洋 大阪大学, 理学研究科, 助教 (60391869)
松浦 宏治 岡山理科大学, 工学部, 准教授 (70443223)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 鞭毛 / 高圧力顕微鏡 / 運動マシナリ / ナノバイオ / 分子操作 |
Outline of Annual Research Achievements |
精子は頭部から伸張させた長い鞭毛を滑らかに振動させて卵子へと遊泳する。鞭毛の振動を生み出す部位は軸糸構造とよばれていて、種を超えてよく保存されている。これまでの研究により、軸糸の外周に並ぶダイニンと微小管の滑り運動は振動を生みだす起動力であり、それ以外の構造は鞭毛全体の滑らかな動きをサポートすることが明らかにされている。本研究では、細胞内ではたらくタンパク質水和を変調できる高圧力顕微鏡を用いて、単細胞緑藻クラミドモナスの軸糸運動を調べた。軸糸の中央付近にある中心小管やスポークなどの部位を欠失したクラミドモナス鞭毛は生理的条件下では振動しない。しかしながら、高圧力をかけることで滑らかに振動しはじめ、圧力増加と共に波打ち運動は非対称的から対称的な様式に変化していった。これは、高圧力を負荷する事で、欠失した部位の役割が高圧力下で補われたことに加えて、細胞内のCa2+濃度が上昇することを意味する。細胞外溶液のCa2+濃度を変えても、軸糸鞭毛の振動様式に大きな差違は見られなかったことから、Ca2+の増分は細胞外からの供給ではなく、細胞内のCa2+ストックからの放出と考えられる。細胞内のCa2+濃度は生理的条件下では一定値になるように維持されている。この手法を応用すれば、遺伝子操作や特殊な化学物質を添加する事なく、生きている細胞内のCa2+濃度を自由にコントロールできる可能性がある。高圧力下での細胞生理の理解には、高圧力下ではたらきを変えるタンパク質の理解が不可欠となる。高圧力下ではタンパク質の構造を大きく変えなくても結合のエネルギーが大きく変化することがMD計算により示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題では、高圧力下でみられる軸糸運動の活性化機構の解明を目的としている。2019年度にはクラミドモナス軸糸を用いることで、高圧力で軸糸運動の活性化と、細胞内Ca2+濃度増加について明らかにする事ができた(Sci Rep. 2020)。細胞内Ca2+については、Ca2+指示薬などを用いて実時間での可視化を行う必要があり、現在、より感度が高く、解像度を高めた顕微鏡開発をすすめている。
|
Strategy for Future Research Activity |
繊毛・鞭毛は、真核生物に幅広くみられる細胞小器官であり、種を超えてよく保存されている。2020年度以降は、ウニ精子などのよりヒトに近い生物種を用いることで、運動解析をすすめ、高圧力下での活性化機構の解明に取り組んで行く。
|
Research Products
(9 results)