2020 Fiscal Year Annual Research Report
Single Molecule Glycomics by Nanoscale Electrophoresis
Project/Area Number |
19H02567
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川井 隆之 九州大学, 理学研究院, 准教授 (60738962)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 雄一 京都大学, 高等研究院, 教授 (90556276)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 電気泳動 / 一分子 / グライコーム / プロテオーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は,電気泳動によって分子を自在に操作し,一分子感度で糖鎖分析をはじめとする生体分子の網羅解析,則ち「一分子オミックス解析」のための分析法を確立することである。2019年度には,マイクロ空間を利用したキャピラリー電気泳動 (CE) と一分子蛍光顕微鏡観察を組み合わせた一分子CE分析システムを構築し,電気泳動と一分子観察を両立するための分析条件の検討を行い,cyanine5 (cy5) で蛍光標識したウシ血清アルブミン (BSA) をモデル試料として一分子CE分析を行い,電気泳動で高速で移動するcy5-BSA分子を明瞭に可視化して動画として取得し,BSA分子を一分子ずつ追跡してその速度を解析できることを示した。 2020年度は,まず複数のモデルタンパク質を混合した複雑試料を対象にキャピラリーゲル電気泳動による分離を行い,検出領域に到達した分子を一分子毎にモニタリングし,分子毎にどのような速度や拡散特性を持つかを解析した。得られた動画データを解析することで,検出時間および瞬間的な分子速度や拡散速度などの二次元データとして記述することに成功した。また同様に,タンパク質へ抗体を結合させて分析することで,その移動度を変化させ,複合体を形成したタンパク質と単体で存在しているタンパク質を1分子毎に見分けることにも成功した。このように,一分子毎にその性質を判別する「一分子オミックス」の基本コンセプトを実証することに成功した。最終的に本手法をHeLa細胞の溶解液の解析に応用したところ,1細胞以下の超微量の試料量であっても,タンパク質を一分子感度で超高感度に分析することに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究成果として,タンパク質混合試料を対象に,試料を分離し,一分子毎の電気泳動挙動をリアルタイムでモニタリングし,各分子がどの程度の速度や拡散速度を持つかを解析することに成功している。また,タンパク質へ抗体を結合させた場合に速度が変化する現象を利用し,一分子毎に複合体を形成しているかを判別することなどにも成功しており,一分子毎にその分子特性を判別する「一分子オミックス」のコンセプト検証がほぼ完了していることから,当初の目標はおおむね順調に達成されている。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から,分子量が10 kDa以下である場合,分子拡散により各分子の速度は大きくばらつくことが分かり,一分子を正確に判別してカウントするという目的のためには,分子拡散を抑制する工夫が必要であることが判明した。ナノ流路を用いることで多少の改善が期待されるが,抜本的な改善は難しいことが予想されるため,今後は,抗体やレクチンなどを介して目的分子へ特異的に重さを付与し,分子拡散を抑制して正確な分析を可能とする新手法を開発する予定である。また,引き続き従来型の一分子電気泳動,則ち糖鎖をCEにより分離し,一分子感度で解析して一分子グライコーム解析を実現するアプローチについても平行して推進する。上記の2つのアプローチから,多角的に一分子解析を行うことで分析精度の向上を目指し,最終的に実用的な一分子オミックス解析技術として完成させたい。
|