2021 Fiscal Year Annual Research Report
Single Molecule Glycomics by Nanoscale Electrophoresis
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19H02567
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川井 隆之 九州大学, 理学研究院, 准教授 (60738962)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 雄一 京都大学, 高等研究院, 教授 (90556276)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | キャピラリー電気泳動 / 一分子顕微鏡 / 糖鎖 / タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖鎖はガラクトース・マンノース等の単糖が重合して形成される高分子であり,タンパク質や脂質に結合して主に細胞膜上に発現しており,細胞認識・増殖・がん化などの多くの生命機能に関与している。本研究ではナノスケール電気泳動と蛍光一分子顕微鏡を組み合わせ,各構造の糖鎖を一分子ずつ見分けてその数を計測する「一分子グライコーム解析法」を実現することで上記を解決し,がん幹細胞やエクソソームなどを対象に一分子グライコーム解析を実践することで,生体内超微小領域における糖鎖研究を推進し,「一分子オミックス解析」という新たな研究領域を開拓することを目指す。 これまでの研究成果として,モデルタンパク質等の試料を対象に一分子毎の電気泳動挙動をリアルタイムでモニタリングし,各分子がどの程度のみかけの電気泳動速度を持つかをヒストグラム化することに成功した。この結果,分子量が小さい場合,分子拡散により各分子のみかけの電気泳動速度は大きくばらつくことが分かり,分離分析法として考えると十分な分子同定性能を持たせにくいことが判明した。一分子を正確に判別してカウントするという目的のためには,分子拡散を抑制する工夫が必要である。そこで,抗体を利用して目的分子へ特異的に重さや電荷を付与し,分子拡散を抑制して特異的な分子挙動変化を導き,正確な分子同定を可能とするアプローチを着想した。実際に標的分子に抗体を結合させることで速度と拡散速度が変化する現象を利用し,分子特異的に複合体形成を判別することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究成果として,タンパク質や糖鎖などの生体分子を一分子ずつ電気泳動挙動をリアルタイムでモニタリングし,各分子がどの程度の速度や拡散速度を持つかを解析することに成功している。また,抗体などの重い分子を結合させて分子拡散を抑制し,さらに総電荷の変化から電気泳動挙動を変化させることで,一分子毎にどの分子かを見分けることに成功した。「一分子オミックス」のコンセプト検証を完了して微量試料中の分子カウンティングという応用フェーズに移行できたことから,当初の目標はおおむね順調に達成されたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り,今年度は抗体やレクチンなどを介して目的分子へ特異的に重さを付与し,分子拡散を抑制して正確な分析を可能とする新手法の開発については一定の進捗があった。一方で従来型の一分子電気泳動,則ち糖鎖をCEにより分離し,一分子感度で解析して一分子グライコーム解析を実現するアプローチについては,分子拡散を抜本的に低下させることが難しく,解決には至っていない。今後分子を交流電場などにおいて振動させて長時間観察し,分子運動の影響を平均化して低減するようなアプローチを検討したい。また得られた一分子解析結果のデジタル解析法についても検討を進め,最終的に任意の試料について解析結果を迅速にアウトプットできる分析システムを完成させたい。
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