2019 Fiscal Year Annual Research Report
High-Q・高帯電MEMS共振子を同調回路に用いた標準電波の電波発電技術
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19H02570
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
橋口 原 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (70314903)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | MEMS / エレクトレット / 電波発電 |
Outline of Annual Research Achievements |
MEMS振動子のHigh-Q特性を利用して、標準電波から信号を振動子に蓄え、整流できる電圧にすることで利用可能な電源とすることを目標としている。今年度は標準電波周波数である40kHzの共振周波数を持つエレクトレット振動子を作製した。櫛歯型とリング型の2種類を検討したが、櫛歯型では櫛歯電極部の枝構造の共振周波数を高くするため剛性を大きくとると、可動部の質量が大きくなってしまい、その結果梁の剛性も大きくとらなければならず、力係数を大きく確保するような設計が困難なことが判明した。そこでリング型の共振子を設計・試作を行った。50Vの電圧でエレクトレット化した振動子では、わずか1mVppの交流電圧で共振させるが可能であることが分かった。またこの時のQ値は20000以上あることが、アドミッタンス計測より判明した。作製したリング振動子を、疑似的な受信アンテナに接続し、受信電圧を測定した。ボルテージフォロワを用いて、振動子がある場合と無い場合で電圧を測定したところ、振動子無しの時の電圧に対して、6倍の出力電圧が得られることが確認できた。High-QのMEMS振動子が蓄えたエネルギーにより、電流源としての電流が大きくなり、その結果出力電圧が大きくなったと考えられる。しかしながら入力電圧7mVに対して43mVの電圧であり、整流して蓄電するには特性としてまだ不十分である。その原因を調べるため、寄生容量を測定しシミュレーションを行ったところ、寄生容量の値が大きすぎることが判明した。寄生容量を少なくとも20pF以下まで減少させることが必要であることも分かった。SOI基板の寄生容量を現在の設計より小さくすることが困難であるため、単層シリコン基板から振動子を作製することが必要となる。来年度は、単層シリコン基板から振動子を作製するプロセスの開発を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
標準電波の周波数のエレクトレットMEMS共振子を作製し、1mVの入力電圧で駆動することができたこと、またその時の共振のQ値が目標値を大きく上回る20000であったことから、共振子の設計はクリアできた。またアンテナで受信した電波の電圧を、MEMS振動子により昇圧が可能であることが実験的に確認できた。ただし整流に必要な電圧までの昇圧は出来なかったことが課題として次年度に繰り越された。 以上のことより、おおむね順調、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず最初に、寄生容量を極力低減するため、SOI基板を用いずに単層シリコン基板で作製するプロセスを実施する。すでに別なプロジェクトで、単層シリコン基板からエレクトレット素子を作製する技術を開発しており、その技術を転用してリング型振動子を作製する。またMEMS振動子の昇圧特性を積極的に利用するため、令和2年度は3端子型のリング振動子構成として、静電トランス機能を共振回路に持たせる。リング振動子は、出力端子をリングの左右2か所から取り出せるので、その出力電圧を加算するような接続として、静電トランスにより昇圧された電圧をさらに2倍にして取り出す構成とする。これらの工夫により、数mVの受信電圧を整流可能な電圧まで昇圧できることを実証する。その後作製したMEMS振動子の真空パッケージを検討する。必要な真空度は、予備実験により0.1Pa程度である。パッケージにおいても寄生容量が増大しないような構成を検討する。
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