2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19H02575
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
前中 一介 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (70173721)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 角速度センサ / ジャイロ / 圧電 / 縦振動 / 極端環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
水晶の縦振動(内部歪み振動)を検出原理とした角速度センサ実現のために、本年度はまず三角柱水晶において、適切な参照振動モード、駆動のための適切な電極配置、コリオリの力検出に適切な電極配置、x、y、z各軸の角速度入力に対して各角速度成分が分離可能な信号処理の基礎について、圧電材料を適切に扱える有限要素法シミュレータを選定・援用して検討を行った。一般的・汎用の回路素子で信号処理ができることも前提に、参照振動の共振周波数を数百kHzとして、デバイスサイズとしては一辺4mm×高さ3mm程度の三角柱をスタートポイントとすることを決定した。選択した振動モードでは、三角柱の側面中央、あるいは上面底面中央を支持点として用いれば振動モードを妨げないことを確認しており、極端環境に耐える強固な支持が可能である。シミュレーション結果に基づき、3mm厚の水晶基板を準備し、正確に三角柱へカットする条件を確立、非定型構造に精度良く電極を形成するプロセスを構築した。三角柱カットに関しては、カッティングに基づくチッピングや歪みの影響が素子特性に対してどの程度の影響が生じるかについてもシミュレーションで確認を行っており、必要かつ十分な精度で加工ができる条件を定めた。また、三角柱の上面下面、及び側面に電極を精度良く形成するために、DMD(Digital Mirror Device)を用いた直描アライナを改造・援用し、十分な精度で三角柱の全面に電極が形成できることを確認している。また、実特性の評価用の各種治具、自動計測プログラム、極端環境を模擬する落下試験器などの設備も準備してデバイスの実特性を評価する段階に入った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画項目としては、(1) 最適な構造設計、(2) 試作のための治具作製、(3)試作・基礎評価、の3項目を挙げていた。最適構造設計については、圧電解析ツールとして、ANSYSおよびFEMTETの2種を相互確認しながら運用し、モード解析により参照振動に必要なモードの探索、そのモードにおいてQ値を仮定して角速度および加速度を印加下条件時における調和解析を行い、コリオリの出力と加速度出力の両者を抽出してデバイス外径及び駆動・検出電極の最適化を行った。縦振動を利用する本センサは、理論解析が大変難しく、ほとんど有限解析法をベースとする設計となる。その際フィッティングパラメータ(特にQ値)の抽出など試作品の特性評価結果からフィードバックする必要があり、早期に試作評価するためのプロセスパラメータの確立、治具作成などを精力的に行った。具体的には、ワイヤーソーによる精度の高い構造加工、三角柱にパターンを描くための直描露光機の準備、三角柱を強固にかつ振動を妨げずに保持する治具、極端環境(衝撃加速度)を与えるための衝突試験器の試作、数百kHzの励振及び同期検波計測のための計測環境確立などである。これらのインフラを整備しながら、デバイスの試作を行い、現在光学的な手法でデバイスの振動状態を計測し、参照振動モードの確認を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、設計手法、数mm角サイズのデバイス試作手法とその初期的な評価関連治具については確立され準備済みである。今後、このデバイスを実用的なシステムとして完成させて行くにあたり、まず電気的インターフェイスを構築したい。現在の基礎評価設備としては、光学的な振動計測、周波数エクステンダーを装備したロックインアンプなど、精度や分解能は高いものの大型・固定式の計測機を用いている。これらの設備に置き換わるインターフェイスをまず構築する。取り扱う信号周波数は数百kHzで、適切なアナログフロントエンド、高速A/D変換、当面はFPGAによる信号処理(自励発振ループ、同期検波など)によって電気的な処理を行う。また、このセンサインターフェイスもセンサと共に衝撃などの過酷な環境で動作する必要があるため専用の基板による小型堅牢化とともに取得信号の無線伝送を意識したパッケージングを検討する。また、現在落下衝突加速度を与える装置は準備しているが、今後一定の加速度を与えこれを計測しながら衝撃を与えるなどの計測が必須であるため、このような治具を検討・試作する。これらにより、動特性を調査しながらデバイスおよびインターフェイスシステムのリワーク、特性向上を目指す。また、動特性の温度依存性はセンサシステムとしては重要なファクタであるが、初年度で未評価であるため、センサインターフェイスの完成を待ってできるだけ早期に調査したい。
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