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2020 Fiscal Year Annual Research Report

バイオシステムの多様な光制御を実現する新規機能性ポリマーの光応答物性

Research Project

Project/Area Number 19H02578
Research InstitutionNational Institute of Advanced Industrial Science and Technology

Principal Investigator

須丸 公雄  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (40344436)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 高木 俊之  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (10248065)
Project Period (FY) 2019-04-01 – 2022-03-31
Keywords光応答性ポリマー / 光細胞操作 / 光応答水溶化 / ニトロベンツアルデヒド
Outline of Annual Research Achievements

2020年度は、NBAポリマーの光反応後に生成するニトロソ基がもたらす効果を中心に検討を進めた。ニトロソ基は二量化するという報告が数多くあるが、ポリマーの側鎖に組み込まれた場合には、ポリマー鎖を架橋するよう働く可能性が示唆される。ポリマーの合成途中で得られるアルデヒド基をアセタール保護したポリマー(光応答電荷発生しない)について検討したところ、光照射によってニトロソ基が生成することがNMR測定の結果示唆された。このアセタール保護NBAポリマーのコート層に光照射を行うと、ポリマーの溶媒溶解性が低下する所見が得られ、この原理によってネガ型フォトレジストとして機能することが明らかになった。一方で、光に応答して水溶化するNBAポリマーについても、水中でなく乾燥状態(空気中)で光照射を行うと、冷水での洗浄によって照射域がむしろ残存する傾向を示すことが確認された。
この知見を活用して、NBAポリマーによって基材に固定された水溶性ポリマーの架橋層の形成を試みた。このような構成が実現すると、水溶性ポリマー架橋層を、光に応答して基材表面からリリースさせ、膨潤させることによって、大きな「動き」として取り出すことが可能となる。しかしながら、NBAポリマーは多くの有機溶媒に架橋するため、他のポリマー溶液のオーバーコートによって多層構造を得るのは困難であった。そこで上記知見に基づいて、NBAポリマー層に空気中のわずかな光照射によって安定化させたのち、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、酸触媒架橋剤及び硫酸を含むメタノール溶液をオーバーコート、加熱によって架橋することで、所望する多層構造を得た。これに水中で光局所照射を行うと、照射域で速やかにHPC架橋層が基材表面からリリースされ膨潤することが確認され、光応答アクチュエータの新たな仕組みとしての応用可能性が示唆された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

年度当初から、新型コロナパンデミックの影響を受け、実験検討を思うように進めることのできない時期があったものの、光ニトロソ生成を中心に、新規性と発展可能性の高い成果を得ることができたと言える。
これまでの検討では、NBAポリマーの光応答水溶(水和亢進)にフォーカスし、細胞操作を含むバイオ系の精密光制御に向けた検討を進めてきたが、カルボキシル基とともに発生するニトロソ基も、二量化を始めとする特徴的な特性を示すことが示唆されていた。アセタール保護によって負電荷を生じない系のみならず、脱保護され光照射によってカルボキシル基を生じるNBAポリマーに関しても、光によって水に干渉されにくくなり、ポジ型フォトレジストとして振る舞う知見が得られたのは重要な発見である。実際、発生するカルボキシル基による水和促進の効果と、ニトロソ基による逆の効果の拮抗が見られ、それを利用することで、他の成分の溶液をオーバーコートして多層構造を形成できることが実証された。これは、NBAポリマー自体の応用可能性にさらなる自由度を付与するのみならず、これから派生して新たな機能を有する光応答性ポリマーの発見に通じる可能性がある。
別の水溶性ポリマー架橋層との組み合わせによって構成した系では、ハイドロゲルの膨潤という大きな動きを、局所光照射によってオンデマンドに取り出す仕組みを実証、ワンウェイ型ながら高い自由度を有する新しいマイクロアクチュエータの構成を提案することができた。

Strategy for Future Research Activity

アセタール保護NBAポリマーにおいて示唆された光発生ニトロソ基による架橋反応については、このメカニズムに基づくゾルゲル転移といった新規光応答物性制御への展開を前広に検討する。こうした検討を行うためには、これまでのコート表面による実験に比べ、1桁以上の多くのサンプル量が必要となり、現状のポリマー調製に基づく手法では厳しい。そこで、より簡便にこうした検討が行えるよう量産可能なNBA誘導体ポリマーの開発を検討する。
また、光応答水溶化NBAポリマーの応用展開ついては、細胞接着阻害表面へのオーバーコート系での細胞パターニングからの選択剥離を中心に、これまでにない細胞操作の実現に向けた検討を進める。

  • Research Products

    (8 results)

All 2021 2020

All Presentation (8 results)

  • [Presentation] やわらかな自立浮遊ハイドロゲル膜上での新たな細胞培養2021

    • Author(s)
      露久保 淳、須丸 公雄、森下 加奈、金森 敏幸
    • Organizer
      第32回高分子ゲル研究討論会
  • [Presentation] 細胞機能の発現を目指したやわらかな自立浮遊ハイドロゲル膜足場上の細胞培養2021

    • Author(s)
      露久保 淳、須丸 公雄、森下 加奈、金森 敏幸
    • Organizer
      2020年度シンポジウム: 細胞アッセイ技術の現状と将来
  • [Presentation] 光パターン化ポリマー薄層の光選択剥離による新規細胞操作2020

    • Author(s)
      須丸 公雄、高木 俊之、森下 加奈、金森 敏幸
    • Organizer
      第69回高分子学会年次大会
  • [Presentation] 細胞機能の亢進を目指した自立浮遊ハイドロゲル膜上での細胞培養2020

    • Author(s)
      露久保 淳、須丸 公雄、森下 加奈、金森 敏幸
    • Organizer
      第69回高分子学会年次大会
  • [Presentation] 細胞機能の亢進を志向したしなやかな自立浮遊ハイドロゲル膜足場の開発2020

    • Author(s)
      露久保 淳、須丸 公雄、森下 加奈、金森 敏幸
    • Organizer
      日本膜学会第42年会
  • [Presentation] 光応答ポリマー二重層を用いた自在細胞操作2020

    • Author(s)
      須丸 公雄
    • Organizer
      第69回高分子討論会
  • [Presentation] 露久保 淳、須丸 公雄、森下 加奈、金森 敏幸2020

    • Author(s)
      やわらかな自立浮遊ハイドロゲル膜を足場とする新規細胞培養系の構築
    • Organizer
      第69回高分子討論会
  • [Presentation] 細胞機能の発現を目指した自立浮遊ハイドロゲル膜足場の創製2020

    • Author(s)
      露久保 淳、須丸 公雄、森下 加奈、金森 敏幸
    • Organizer
      膜シンポジウム2020

URL: 

Published: 2022-12-28  

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