2019 Fiscal Year Annual Research Report
Study of the mechanism of current-induced magnetism and the enhancement of the effect by strong electron correlation
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19H02583
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
古川 哲也 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (10756373)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電気磁気効果 / 電流誘起磁性 / 空間反転対称性の破れ / ジャイロトロピック / 核磁気共鳴 / 半導体 / 磁性 / スピントロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は最近発見された電流誘起磁性の機構を解明するとともに、電子の強相関効果による電流誘起磁性の巨大化を目指すものである。このうち本年度の研究では電流誘起磁性の発現機構の解明のために、以下の研究を行った。 ・単体半導体Teにおける電流誘起磁性の核磁気共鳴による検出の精緻化:単体Teにおける電流誘起磁化は核磁気共鳴を用いて観測されているが、その符号と結晶のカイラリティの関係についての実験的議論はなかった。そこで右手・左手結晶を作り分けした試料を用いて電流誘起磁化の検出を行い、電流誘起磁化が結晶カイラリティによって反転することを明らかにし、そのバンド構造との関係を明らかにした。また、観測された電流誘起核磁気共鳴シフトが、電流誘起磁性によるものか、磁場と電流印加のための電場とによる電場磁場双線形効果によるものかを実験的に検証するため、電流誘起核磁気共鳴シフトの磁場極性依存性の実験を行った。その結果、磁場によるシフトの符号反転を得ることに成功し、この現象が電場磁場双線形効果によるものではなく、電流誘起磁化のために生じていることを明らかにすることに成功した。 ・キャリアドープした単体Te純良試料の作成:Teの電流誘起磁性について、そのバンド構造との対応を理解するためには、効果のキャリア密度依存性を調べる必要があり、本年度ではキャリアドープしたTeの作成を目指した。その結果、これまでにドープ試料の作成によく用いられる融液法ではなく、単一ドメイン試料を得やすい昇華法を用い、Biをドープすることでキャリア密度をノンドープ試料から大きく増大させた高易動度試料を作成することができた。 ・電気化学的手法によるn型Teの作成の試み:単体半導体Teにおいて、伝導帯の放射状のスピン構造のもとで生じる電流誘起磁性の検証のために、これまで報告のないn型Teの作成を、電気化学的手法によって目指した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標のひとつである電流誘起磁性の機構について、結晶カイラリティと電流誘起磁性の関係を明らかにしたことや、電場磁場双線形効果の可能性を排除し電流誘起磁性の実験的検出方法を確立できたことから、主要な目標は概ね達成している状況である。電気化学的手法によるn型Teの作成の試みについては、単純な方法では作成が難しいことがわかったため、新たに別の手法を検討し、実現が難しいと判断した場合は他の目標の達成に注力する。また本年度中に研究代表者の所属が変更になったが、研究体制については必要な実験を行うべく対応している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果を受けて、単体Teにおける電流誘起磁化の発現をより厳格に実証することができたため、今後はドープされた試料での電流誘起磁化測定を行うことを目指す。ただし、作成された試料がもつ高い電気伝導度によって電流印加下核磁気共鳴測定が困難になるおそれがあるため、核磁気共鳴実験の実現性を慎重に吟味しつつ研究を遂行する予定である。また電気化学的手法によるn型Teの作成の試みについても、新たに別の手法を検討し、期間内の実現が難しいと判断した場合には一旦、本研究課題の他の目標の達成を目指す。一方で新たに、極性結晶における電流誘起磁化の検出が電流誘起磁化の機構解明・学理構築という本研究課題の目標達成に有効であることに研究の途上で思い至ったため、このような新しい方向での研究も柔軟に遂行していく予定である。電流誘起磁化の強相関効果による増強については、候補物質の合成を目指すとともに、検出方法として核磁気共鳴以外の手法が可能かを探りつつ研究を遂行していく。
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