2019 Fiscal Year Annual Research Report
Control of metal-insulator transition of Ti2O3 films by epitaxial strain
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19H02588
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉松 公平 東北大学, 多元物質科学研究所, 講師 (30711030)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 金属絶縁体転移 / 酸化チタン / 薄膜 / 相転移デバイス / 電子分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではTi2O3薄膜の相転移制御と応用を目指し、今年度は1) Ti2O3薄膜の合成と電子状態評価、2)応用のための微細加工プロセスの確立をメインに進めた。1)の合成と電子状態評価では、パルスレーザ堆積法を用いc面サファイア基板上に高品質単結晶薄膜の合成条件検討から最適化を行った。X線回折や原子間力顕微鏡により高品質かつ表面平坦な薄膜の合成を明らかにした。合成した薄膜を超高真空下で搬送可能なモバイルLoad Lockシステムを用いて、KEK-PFのBL2で光電子分光測定とX線吸収分光測定を行った。光電子スペクトルから、Ti2O3に特有の内殻スペクトル形状が得られた。また、X線吸収分光から明瞭な線二色性スペクトルが観測され、a1g軌道への選択的な電子占有が明らかとなった。 2)の微細加工プロセスの確立では、プロジェクタ光の顕微鏡集光による露光システムを導入し、フォトリソグラフィ環境を構築した。Image Reversalレジストを用いた一般的なフォトリソグラフィプロセスにより、20倍の対物レンズを用いた集光露光で最小線幅3 ミクロンのレジストパターンの形成に成功した。マスク合わせ用のx,y,θステージの追加導入によりマスク合わせを可能とし、Ti2O3薄膜エッチングやリフトオフによるデバイスプロセスを進めている。さらにイオン液体を用いた電界効果実験のため、温度可変の電気抵抗測定システムを設計制作しており、次年度以降の薄膜の電子物性評価を行うための環境を構築している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、c面サファイア基板上へのTi2O3薄膜の合成条件確立と電子分光を利用したTi2O3相の形成、抵抗率の温度依存性による金属絶縁体転移発現の確認を行った。薄膜合成では、パルスレーザ堆積法を用い基板温度を< 1100度、 酸素及びArガス導入の様々な条件で多数の薄膜を合成し、基板温度1000度、 酸素圧力5 x 10-7 Torrが最適であると決定した。電子状態観測はKEK-PFを利用した放射光光電子分光とX線吸収分光により行った。光電子分光では、Ti 2p内殻スペクトルからTi2O3特有のTi2O9二量体に由来する特異なスペクトル形状が観測された。X線吸収分光からは明瞭な線二色性が得られ、a1g軌道への優先的な電子占有が明らかとなった。抵抗率の温度依存性では、抵抗変化率は小さいものの相転移が観測された。以上の結果からTi2O3薄膜の形成を明らかにした。 薄膜合成とは別に将来のデバイス化を目指し、薄膜の微細加工プロセスの確立を進めた。フォトリソグラフィによる微細パターン形成のため本科研費を用いて一通りの装置を導入した。露光にはメタルマスク不要で縮小光学系となる顕微鏡マスクレス露光装置を採用した。20倍の対物レンズまでの光学系でフォトリソグラフィープロセスを最適化し、最小線幅3ミクロンのレジストパターンの形成を実現した。スパッタによる電極蒸着とリフトオフ、溶液による薄膜の化学エッチング、犠牲層による薄膜の直接パターニングを並行して行い、最適な微細加工手法の選択を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、Ti2O3薄膜の金属絶縁体転移について、電子状態観測とエピタキシャル薄膜による結晶格子変形の観点で研究を進める。電子状態観測では、放射光施設を活用した角度分解光電子分光測定により、Ti2O3のバンド分散の直接観測を行う。バルク体のTi2O3は劈開面を持たず、平坦かつ正常な表面を得ることが不可能である。このような三次元物質の場合、薄膜による角度分解光電子分光がバンド分散の決定に重要な役割を果たす。単結晶Ti2O3薄膜を大学研究室で合成し、超高真空状態を保ちながら放射光施設へ搬送、電子分光測定を行う。軟X線を用いた角度分解光電子分光測定により、物性を担うフェルミ準位近傍のバンド分散を実験的に決定する。測定温度を変えることで、金属と絶縁体状態の両者のバンド分散を決定でき、相転移に伴う電子状態変化を運動量空間で明らかにする。また、得られたバンド分散と理論計算との比較も行う。 エピタキシャル薄膜による結晶格子の変形では、イルメナイト型構造を持つLiNbO3とLiTaO3基板を用いたTi2O3薄膜の合成を行う。コランダム構造を持つa-Al2O3と異なり、LiNbO3とLiTaO3はa軸長がTi2O3と非常に近い、z-cut(コランダム型構造のc面相当)を用いることでバルクと非常に格子定数の近いTi2O3薄膜を得ることができる。薄膜合成には昨年度と同様にパルスレーザ堆積法を用い、単結晶となる条件を探索する。X線回折やラマン分光法を活用し、Ti2O3相の形成と配向性を決定する。金属絶縁体転移の発現は抵抗率の温度依存性から明らかにする。Ti2O3薄膜のc/a比と転移温度抵抗変化率について明らかにする。同様に、a, m面サファイア基板やx, y-cutのLiNbO3, LiTaO3を用いて薄膜を合成する。面方位によるエピタキシャル応力から、相転移の発現の違いについて明らかにする。
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[Journal Article] Temperature evolution of magnetic phases near the thickness-dependent metal-insulator transition in La1-xSrxMnO3 thin films observed by XMCD2020
Author(s)
G. Shibata, K. Yoshimatsu, E. Sakai, K. Ishigami, S. Sakamoto, Y. Nonaka, F. -H. Chang, H. -J. Lin, D. -J. Huang, C. -T. Chen, H. Kumigashira, and A. Fujimori
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Journal Title
J. Phys. Conf. Proc.
Volume: -
Pages: -
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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