2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19H02589
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
丸山 伸伍 東北大学, 工学研究科, 准教授 (80732362)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 薄膜成長 / 界面 / 液晶 / 赤外分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、液体・液晶と無機固体基板の界面におけるバルクとは異なった構造や性質の静的・動的な挙動を、薄膜アプローチにより実験的に明らかにすることである。これは、従来の固液界面科学のようにバルク液体・液晶に埋もれた固液界面を界面選択的な測定によりプローブするのではなく、ナノレベルで制御された液体・液晶薄膜という”むき出しの固液界面”を作って調べるというアプローチである。 2年目である2020年度は、初年度から開発してきた赤外p偏光多角入射分解分光(pMAIRS)-真空蒸着複合装置を用い、ペリレン誘導体薄膜の成長中における液晶相を経由した結晶化について調べた。成膜時の基板温度をバルクの過冷却液晶温度とすることで、蒸着初期には液晶相に相当する吸収ピークが観察され、蒸着膜厚を増加させると、ある臨界膜厚で結晶相に相当する吸収ピークが現れた。蒸着初期の液晶相は、ポストアニールの昇温過程で結晶から液晶に転移する際の結晶相の直上にある液晶相とは異なり、より高い温度で現れる液晶相と同じスペクトル形状であったことから、真空蒸着プロセスを経ることで、高温液晶相が基板上で安定化されていると考えられる。さらに蒸着すると、赤外スペクトルは結晶相由来の吸収ピークのみとなった。これらの結果は、これまでその場顕微鏡およびX線回折測定から示唆されていた薄膜結晶成長過程と一致しており、赤外分光の観点からも薄膜成長中の液晶-結晶相転移の詳細が裏付けられた。現在、詳細な分子配向の解析を行っている。 さらに、チオフェン系低分子の蒸着による過冷却液体薄膜からの結晶化についても、その場赤外分光を実施し、明瞭な液体-結晶転移が見られることを確認した。これについては現在論文化を検討している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度前期においては、新型コロナウイルス対策による研究活動の制限等により、想定していた実験を縮小せざるを得ない状況にあったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでは液体と液晶を中心に、蒸着中のその場赤外分光を強力なツールとして用いて、薄膜の成長過程および相転移過程の構造を調べてきた。最終年度は、さらに対象材料を広げて、非晶質有機薄膜の基板界面における構造や、その結晶相転移を明らかにすることに挑戦する。有機薄膜における非晶質からの大型の結晶グレイン成長が、一部の低分子有機材料で報告されており、結晶化前駆相として液体や液晶などとの類似性が興味深い。
|
Research Products
(4 results)