2020 Fiscal Year Annual Research Report
Exploration of quantum phenomena emerging at van der Waals superstructures
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19H02593
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中野 匡規 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (70592228)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 薄膜・界面物性 / 二次元物質 / エピタキシー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、MBE法による二次元物質のエピタキシャル成長を軸に、様々な二次元物質を積層させた超構造において発現する新しい物性や機能性の開拓に取り組んでいる。研究は超伝導ファンデルワールス超構造に関するものと磁性ファンデルワールス超構造に関するものに大きく分けられる。まず前者に関しては、本年度は主に3R-TaSe2の製膜条件の見直しに時間を費やした。特に、今後各種二次元磁性体との超構造の構築や接合デバイスの作製へと研究を展開していく上で、極性ドメインの向きが制御された単結晶薄膜の作製が重要になってくるため、その点を意識して品質改善に取り組んだ。その結果、面直方向のドメインは一方向に揃った試料を作製することが可能になった。一方で、面内方向のドメインを完全に揃えるまでには至っていないが、ドメインの割合にアンバランスを生じさせる段階までは到達できた。また、それと並行して、電子線リソグラフィを用いた微細加工プロセスを確立し、接合デバイスを作製するために必要な準備を行った。一方、後者に関しては、V5Se8 / NbSe2界面で生じる磁気近接効果の詳細を検討した。具体的には、VのL端におけるX線磁気円二色性(XMCD)測定に取り組み、磁気輸送測定で得られた結果がVのスピン分極に起因していることを明らかにした。また、総和則を用いた解析から、Vの全磁気モーメントに対する軌道磁気モーメントの寄与がほぼゼロであることを見出した。このことは、同界面で観測された面直磁気異方性の起源がV5Se8中でのスピン軌道相互作用以外に存在することを示唆している。この結果を説明するために、V5Se8中の局在スピンとNbSe2中の(ゼーマン型スピン軌道相互作用により面直方向にスピン偏極した)伝導電子の相互作用を取り込んだモデルを構築し、実験結果を説明することに成功した。以上の成果をまとめて論文として出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は3R-TaSe2中の極性ドメインの配向制御と電子線リソグラフィを用いた微細加工プロセスの確立が重要な技術課題であった。前者に関しては、面直方向のドメインを揃えることができただけでなく、面内方向のドメインにもアンバランスを生み出すことができ、次のステップである接合デバイスの作製に進むことが可能になった。また、電子線リソグラフィによる微細加工プロセスは完全に確立した。以上の進展により、次年度以降に接合デバイスを作製することが可能になったため、当初の目標は達成できたと考えている。一方、磁性ファンデルワールス超構造の研究に関しては、V5Se8 / NbSe2界面で生じている磁気近接効果の詳細を解明することができたため、こちらも当初の目標は達成できたと考えている。また、新しい二次元磁性体の開発も本年度の重要な課題であったが、こちらに関しても大きな進展があった。まずCr-Te化合物のMBE成長に取り組み、得られた物質がCr3Te4であることを明らかにした。そして、薄膜作製後に熱処理を施すことで、室温強磁性が得られることを見出した。次に、熱処理前後の試料に対して磁気異方性の評価を行い、熱処理前の試料が非常に大きな面直磁気異方性を示すことを発見した。さらに、それぞれの試料に対してTCの層数依存性を評価し、熱処理後の試料は層数の減少に伴ってTCも減少するのに対して、熱処理前の試料は二次元極限までTCがほとんど変化しないという極めて珍しい振る舞いを示すことを発見した。以上の成果は当初は想定していなかったことである。他にも、Cr1/3NbSe2における二次元XY強磁性の実現や、単層TaTe2における新奇電子状態の実現など、当初は想定していなかった成果が数多く得られており、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず超伝導ファンデルワールス超構造に関しては、これまでに確立した製膜プロセスや微細加工プロセスを駆使することで、3R-TaSe2を用いた超伝導トンネル接合を作製し、トンネル分光測定などの精密分光測定を行う。また、それと並行して、これまでに開発してきた二次元強磁性体との超構造を作製し、上部臨界磁場の温度依存性を評価することで、界面における交換結合の有無を検証する実験にも取り組む。その上で、これらの超構造に対しても超伝導トンネル接合を作製し、同様の精密分光測定を行うことで、新奇界面超伝導物性の開拓に取り組む。一方、磁性ファンデルワールス超構造に関しては、引き続きV5Se8とNbSe2の界面で生じている磁気近接効果に注目し、今度はV5Se8からの作用によりNbSe2中で生じているはずの変化を検出する実験に取り組む。具体的には、V5Se8からの作用によりNbSe2がフェロバレー強磁性状態になっていることが期待されるが、これを実験的に実証すると共に、理論家との共同研究を行い、包括的な理解を目指す。さらに、NbSe2やTaSe2の層間に様々な磁性イオンをインターカレーションさせた超構造の作製と、その物性開拓に取り組む。このような物質系自体は古くから知られているが、その物性には未解明な点が多い。また、これらの物質系は三次元性が強いために劈開が困難であり、超薄膜領域の物性は完全に未開拓である。本研究ではMBEによるlayer-by-layer成長を用いてこの未開拓領域に切り込み、NbSe2やTaSe2などの「イジング金属」の電子状態が層間の磁性イオンによってどのように変調を受けるのかを明らかにする。また、様々な磁性イオンをインターカレーションさせた超構造を設計・構築し、バルクでは見られない新奇磁性の実現を目指す。
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Research Products
(28 results)
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[Presentation] Zeeman-type spin-orbit interaction induced Ising ferromagnetism at a van der Waals interface2021
Author(s)
Hideki Matsuoka, Masaki Nakano, Stewart Edward Barnes, Jun'ichi Ieda, Sadamichi Maekawa, Mohammad Saeed Bahramy, Bruno Kenichi Saika, Yukiharu Takeda, Hiroki Wadati, Yue Wang, Satoshi Yoshida, Kyoko Ishizaka, Yoshihiro Iwasa
Organizer
The 60th Anniversary Fullerenes-Nanotubes-Graphene General Symposium
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[Presentation] Electronic structure of CrxNbSe2 epitaxial thin films studied by angle-resolved photoemission spectroscopy2021
Author(s)
Bruno Kenichi Saika, Satoshi Hamao, Yuki Majima, Hideki Matsuoka, Masaki Nakano, Satoshi Yoshida, Masato Sakano, Koji Horiba, Hiroshi Kumigashira, Yoshihiro Iwasa, Kyoko Ishizaka
Organizer
日本物理学会 第76回年次大会
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[Presentation] The crossover between the orbital and paramagnetic limits in angle dependence of Hc2 of 2D NbSe22021
Author(s)
Hideki Matsuoka, Masaki Nakano, Takashi Shitaokoshi, Takumi Ouchi, Yue Wang, Yuta Kashiwabara, Satoshi Yoshida, Kyoko Ishizaka, Masashi Kawasaki, Yoshimitsu Kohama, Tsutomu Nojima, Yoshihiro Iwasa
Organizer
The March Meeting 2021 of the American Physical Society
Int'l Joint Research
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[Presentation] Angle-resolved photoemission spectroscopy study of single-layer TaTe2 grown by molecular-beam epitaxy2020
Author(s)
Bruno Kenichi Saika, Satoshi Yoshida, Natsuki Mitsuishi, Masato Sakano, Yuita Fujisawa, Yoshinori Okada, Yue Wang, Hideki Matsuoka, Masaki Nakano, Yoshihiro Iwasa, Kyoko Ishizaka
Organizer
日本物理学会 2020年秋季大会
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