2020 Fiscal Year Annual Research Report
Investigations on Energy Dissipation Mechanisms in Atomic Force Microscopy in Liquids
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19H02598
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 圭 京都大学, 工学研究科, 准教授 (40335211)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / 固液界面 / エネルギー散逸 |
Outline of Annual Research Achievements |
液中で動作する周波数変調原子間力顕微鏡(FM-AFM)により、原子・分子レベルでの表面構造、水和・溶媒和構造、電荷分布が可視化できるようになってきたが、これまでの液中FM-AFM計測は全て保存的相互作用力の計測に基づいているため、表面位置の決定や接触力・水和力・電気二重層力の区別が困難であった(一般に、AFM探針と試料との間にはたらく相互作用は保存的相互作用と散逸的相互作用に分けられる)。
本研究課題では、液中AFMにおける散逸エネルギーの測定精度を高め、保存力と散逸力を分離、相互に解析し、モデル試料を対象に散逸マッピングを行い、試料の構造・水和・電荷・機械的特性(機械的安定性や粘弾性)との相関を議論する。また、化学修飾した探針を用いて生体分子間の特異的相互作用力を計測し、結合・破断に伴うエネルギー散逸の計測を行う。
現在までに、カンチレバーの振動波形を高速デジタイザによって記録、振動波形をデジタルフィルタ処理後にヒルベルト変換、得られた解析信号の瞬時周波数および振幅を計算する方法を開発、これを用いてマイカ-KCl水溶液界面における水和構造計測に成功、マイカ-イオン液体水溶液界面におけるイオン分布計測に成功した。一方、3次元フォースマッピングにおいて得られたタンパク質分子の表面形状像における高さヒストグラムから、3次元フォースマッピング時における探針による分子変形の大きさを見積もる方法を開発した。さらに、FM-AFMにおける走査中の各点において任意の波形を用いて探針を近接・離反させて周波数シフト、散逸エネルギー、平均たわみの情報を記録できる時分割フォースマッピング法を開発し、生体分子等のモデル試料を対象に試料の粘弾性を定量的マッピングに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生体分子等のモデル試料を対象にFM-AFMにおける走査中の各点において任意の波形を用いて探針を近接・離反させて周波数シフト、散逸エネルギー、平均たわみの情報を記録できる時分割フォースマッピング法を開発した。これにより、周波数シフト、散逸エネルギー、平均たわみの情報が同時に得られるため、試料の粘弾性を定量的にマッピングできるようになった。また、化学修飾した探針を用いた生体分子間の特異的相互作用力計測に関し、biotin分子で修飾した探針を用いてstreptavidin上で2次元/3次元マップを取得し、リンカー分子の長さを変えて実験を行い、生体分子間の特異的結合・破断、空間分解能、リンカー分子長の相関を調べた。
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Strategy for Future Research Activity |
高分子材料や生体分子等のモデル試料を対象に散逸エネルギーマッピングを行い、また時分割フォースマッピング法を用いて表面構造・水和構造・電荷・機械的特性との相関を議論する。液中AFMを用いた時分割フォースマッピング法により、カンチレバー共振周波数を熱振動スペクトルからリアルタイムで計測するピークトラッキング熱振動顕微鏡法(PT-STNM)法による粘弾性マッピングを試み、散逸エネルギーマッピングと粘弾性マッピングの相関を議論する。
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Research Products
(15 results)