2019 Fiscal Year Annual Research Report
無機/有機界面でのキャリア注入速度に着目した有機電界発光素子の高周波数駆動化
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19H02599
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森井 克行 大阪大学, 工学研究科, 招へい教授 (70303352)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 裕義 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90172254)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 有機電界発光素子 / 高周波数駆動 / 有機無機界面 / 電子注入 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度に掲げた目標は、「一般有機電界発光素子(OLED)の周波数応答特性の明確化と無機層の挿入による影響の初期検討」および「有機無機界面に着目した光学的手法を用いた定量的電子注入挙動観察に関する予備検討」である。 前者は、一般的な材料および構成のOLEDを再現性含め高精度に作製し、詳細な周波数応答特性を明らかにした。これまでも有機電界発光素子の周波数応答に関する検討はあるものの、低周波数帯からGHz帯近くまでの幅広い周波数領域に対する応答特性を系統的に調べた例はほぼなく、OLEDに対して新しい知見を加えることができた。加えて、検討例が皆無である無機層を挿入した有機無機ハイブリッドLEDについて、同様の系統的評価を行い、初期的ではあるものの有用な結果を得た。応答性が失われていく遮断周波数は両者の間で大きな差はないものの、OLEDでは1MHzの高周波数下では発光が確認できないのに対して、無機層の挿入により遮断周波数前の輝度の2割程度で発光することが確認できた。これらの結果は新規であり、特許出願に向けた準備および学会発表を実施した。 後者は、光学的手法として時間分解二光子光電子分光を選定できた。この手法は一つ目の光で励起し、二つ目の光で励起された電子の状態を観測し、この二つの光の間隔をパラメータとすることで緩和過程を観測しようとするものである。無機層が励起可能で、その緩和過程が観測可能であることを確認したのち、有機層を加えて同様の測定を行った結果、緩和過程に遅れが生じていることを観測した。このことから初期的ではあるが、導電層から無機(酸化亜鉛)層を経て有機(電子輸送材料)層に電子が移動したことを観察していると推定するに矛盾のない結果を得たと考えている。電子の抽出過程の観測は、これまでも報告はあるが、その逆である電子の注入過程の観測は初めてである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は大きく分けて2つの目標から構成されている。 ①OLEDの周波数応答特性について明らかにし、無機層の挿入による変化を観察することが第一の目標であるが、一般的な材料である緑発光材料(Alq3)と正孔輸送材料(NPD)の系を用いたOLEDの詳細な周波数応答特性を明らかにした。加えて、無機層を挿入した有機無機ハイブリッドLEDについて、周波数応答性が高く、OLEDでは追従できない1MHzでも発光が確認できることを確認した。今後再現性を含め検討し、詳細な違いを明らかにし、その差異の要因を明らかにする予定である。これらのことから、本年度の目標は達していると考えている。 ②有機無機界面に着目した、電子注入の光学的手法による定量的観測に向けた予備検討が第二の目標である。手法選定および実験場所の確保に時間を要したが、結果として、時間分解二光子光電子分光法に定まった。この決定には、予備検討として無機(酸化亜鉛)層のみの試料において、電子励起が可能であること、そしてその緩和過程がプローブ光により観測可能であることが確認できたことによって選定に至った。さらに予備検討を進め、電子が移る先である有機層として電子輸送層を無機層上に製膜することで緩和過程を同様に観測した。その結果、無機層だけの場合よりも長い緩和過程が観測された。これら一連の結果から、導電層、そして無機層、有機層に電子が渡り、それを観測できているとする推定に矛盾のない予備検討結果が得られたと考えた。よって目標を達したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の二点を軸に進める。 1,無機層の挿入により周波数特性が変化しており、より高い周波数まで応答可能になった要因を明らかにする。より詳細な発光挙動評価のために、定量評価可能な過渡EL測定システムを立ち上げ、それによる評価を試みる。加えて、そこで得られた結果から物理描像を推定し、デバイスシミュレーションにより立証していく。 2,再現性を含めた確認を行う。さらに定量性がどの程度担保できるのか検証していく。これらが確認できれば、無機層上の修飾により電子移動がどのように変化するかを観測する。
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Research Products
(15 results)