2019 Fiscal Year Annual Research Report
物質中での電子線多重散乱過程解明に基づく形状も密度も正しい三次元再構成法の実現
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19H02600
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山崎 順 大阪大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 准教授 (40335071)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電子線トモグラフィー / 密度定量 / 多重散乱 / 透過率減衰 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1)物質厚さ増加に伴うTEM像とSTEM像の強度変化曲線を精密な実験に基づき解明すること、2)得られた強度変化曲線の数式に基づき、物質形状だけでなく密度まで正しい三次元再構成すなわち「密度定量トモグラフィー」を確立すること、3)その手法を各種材料に適用し有効性を実証すること、の三点である。まず上記1に関して、前年度以前に判明していた物質厚さ増加に伴うTEM像強度減衰曲線の関数に基づき、STEM像の強度変化曲線を与える関数の導出に取り組んだ。また電子顕微鏡像シグナルと物質厚さの関係を効率よく計測するための試料作製について、集束イオン加工装置によるプロセスの検討を行った。次に上記2に関して、物質内密度が区分的一様という拘束条件のもとに上記の関数に含まれるパラメータの最適値を割り出し、それによって内部密度の正しい3次元再構成を行う手法の確立に取り組んだ。その結果、実験データが含む画像ノイズの影響および傾斜シリーズ画像の位置合わせエラーに起因するストリークアーティファクトによってパラメータ決定精度が制限されてしまうことを明らかにした。この問題への対策として、ノイズ処理フィルターの活用と新たに考案した像アライメント手法の活用により、正しい密度最構成を達成するための取り組みを進めた。また上記3に関して、超高圧電子顕微鏡用の全角傾斜トモグラフィー試料ホルダーの仕様の検討を行い、次年度以降における作製に向けた準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大阪北部地震で故障した超高圧電子顕微鏡の高圧タンクの修理過程で、令和元年8月に電子回路部品の故障により修理作業の一部をやり直す必要が生じ、修理完了が当初予定されていた同年10月から翌3月に延期されることが判明した。研究遂行上、超高圧電子顕微鏡に試料ホルダーを設置して行う電子線トモグラフィー実験が不可欠なため、修理完了時期延期により待機する必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度に行えなかった超高圧電子顕微鏡用の試料ホルダーを作製する。また、STEM像シグナルと物質厚さの関係を解明する。さらに、密度定量トモグラフィーの達成に向けて、画像ノイズや像アライメント精度に起因する問題と解決する手法の開発を進める。
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