2020 Fiscal Year Annual Research Report
物質中での電子線多重散乱過程解明に基づく形状も密度も正しい三次元再構成法の実現
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19H02600
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山崎 順 大阪大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 准教授 (40335071)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電子線トモグラフィー / 密度定量 / 多重散乱 / 透過率減衰 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1)物質厚さ増加に伴うTEM像とSTEM像の強度変化曲線を精密な実験に基づき解明すること、2)得られた強度変化曲線の数式に基づき、物質形状だけでなく密度まで正しい三次元再構成すなわち「密度定量トモグラフィー」を確立すること、3)その手法を各種材料に適用し有効性を実証すること、の三点である。まず上記1に関して、前年度以前に判明していた物質厚さ増加に伴うTEM像強度減衰曲線の関数に基づき、STEM像の強度変化曲線を与える関数を導出することに成功した。またくさび形状に加工したアモルファス材料を用いたSTEM計測実験を行い、この関数で実験データを高精度に再現できることを確認した。次に上記2に関して、物質内密度が区分的一様という拘束条件のもとに上記の関数に含まれるパラメータの最適値を割り出し、それによって内部密度の正しい3次元再構成を行う手法の確立に取り組んだ。実験データが含む画像ノイズの影響および傾斜シリーズ画像の位置合わせエラーに起因するストリークアーティファクトによってパラメータ決定精度が制限されてしまうことが前年度までに判明していた。この問題への対策として、ノイズ処理フィルターの活用と新たに考案した像アライメント手法の活用により、正しい密度最構成への目処をたてることに成功した。また上記3に関して、令和3年度の研究遂行に向けての準備として、超高圧電子顕微鏡用の全角傾斜トモグラフィー試料ホルダーを作製しその性能確認を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請書に記載した研究計画のうち、密度定量トモグラフィーを達成する種々の要素技術の開発は概ね達成しつつある。一方、幅広い計測条件と物質組成に渡っての電顕像強度変化計測については、当初の計画よりも遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度までに達成できなかった計画の遂行に加え、最終年度に計画していた各種材料への適用と有効性実証について研究を推進する。また課題申請時に記載した研究協力者が令和2年度末に退職したため、研究代表者所属組織の技術職員に代行を依頼する予定で調整する。
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