2020 Fiscal Year Annual Research Report
h-BNヘテロ構造を利用した高移動度ダイヤモンドFETの創製と量子輸送現象の開拓
Project/Area Number |
19H02605
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
山口 尚秀 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主幹研究員 (70399385)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ダイヤモンド / 電界効果トランジスタ / 移動度 / 六方晶窒化ホウ素 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素終端したダイヤモンド表面を大気に晒すことなく、単結晶の六方晶窒化ホウ素(h-BN)を貼り合わせてゲート絶縁体とすることで、極めて優れた特性を示すダイヤモンド電界効果トランジスタ(FET)の作製に成功した。水素プラズマ照射によってダイヤモンド表面を水素終端化したのち、アルゴンで満たされたグローブボックスに真空搬送し、この中でスコッチテープ法によって剥離したh-BN単結晶の薄片を転写した。これによって、電荷キャリア(ホール)の移動度を制限する要因となっていた大気由来の表面アクセプター密度を低減することができた。作製したFETはp型動作を示し、680 cm2V-1s-1のホール(Hall)移動度、1.4 kOhmのオンシート抵抗、1600 um mA/mmのゲート長規格化電流密度を示した。これらは、ダイヤモンドのみならずワイドギャップ半導体のp型電界効果トランジスタでこれまで報告された中で最高の特性である。さらに、これまでに報告されていた欠陥の導入などの手法を用いることなく、ノーマリオフ特性を得ることができ、オンオフ比も8桁と高い。これらの特性は、電力損失の少ないスイッチング素子として理想的なものである。本研究は、これまで一般に水素終端ダイヤモンドのp型表面伝導の発現に必須だと考えられてきた表面アクセプターが必要ではなく、むしろ低減させることによってFETの特性が向上することを示している。今後のダイヤモンドFETの研究を大きく変革させ得る重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ダイヤモンドは、ワイドバンドギャップや、高絶縁破壊電界、高熱伝導度などの優れた特性をもち、次世代半導体材料として期待されている。本研究ではグラフェン等の2次元物質の研究手法を利用して、ダイヤモンド電界効果トランジスタ(FET)の特性、特に移動度を飛躍的に向上させる。具体的には、これまでAl2O3などのアモルファスの酸化物が使われてきたゲート絶縁体に、荷電不純物の少ない単結晶の六方晶窒化ホウ素(h-BN)を利用する。高品質なダイヤモンド/h-BNヘテロ界面の形成によって高移動度化を追求し、高周波増幅器・省電力高速スイッチング素子の実現および新規量子物性の探索を行う。現在までに、h-BNをゲート絶縁体として利用したダイヤモンドFETの量子振動現象の観測に成功するとともに、h-BN/ダイヤモンドヘテロ構造の界面の高品質化を進め、これまでに報告された中で最高のHall移動度や最少のオンシート抵抗を示すダイヤモンドFETの作製に成功した。申請書の提案内容に沿ってダイヤモンドFETの特性向上を達成しており、研究は順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、ダイヤモンド/h-BNヘテロ界面の高品質化を追求し、ダイヤモンド電界効果トランジスタの移動度の向上、および、それに伴うオン抵抗やオン電流などのトランジスタ特性の向上を図る。界面にホール反転層を形成させるために、ダイヤモンドの表面は水素終端化する。ダイヤモンド化学気相合成装置の中で、ダイヤモンド表面に水素プラズマを照射することで水素終端化する。このあと、真空トランスファーベッセルを使って、ダイヤモンド表面を大気に晒すことなく不活性ガス雰囲気のグローブボックスに搬送する。グローブボックス内で、劈開したh-BN単結晶薄膜をドライ転写法によってダイヤモンド表面に貼り合わせる。これにより、大気由来の荷電不純物密度を低減したh-BN/水素終端ダイヤモンドヘテロ構造を形成する。ダイヤモンド表面の表面準位の低減にも注力する。h-BNの上部にさらにグラファイトを転写することでゲート電極とする。作製したダイヤモンドトランジスタの特性評価を室温および低温までの広い温度範囲において行う。室温における伝達特性および出力特性から、オン抵抗、最大オン電流、閾値電圧、オンオフ比、実効移動度などの評価を行う。ホール効果測定によって、ホール移動度やキャリア密度の評価を行う。また、超伝導マグネットを備えた無冷媒冷凍機を使って、1.4 Kまでの低温、9 Tまでの磁場中の特性評価を行う。さらに、新規量子物性の探索のために、超伝導マグネットを備えた希釈冷凍機を使って、20 mKまでの低温、17.5 Tまでの強磁場での測定を行う。実験的に得られた移動度の温度依存性を、モデル計算の結果と比較し、移動度を制限する要因を調べ、実験にフィードバックをかける。
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Research Products
(5 results)