2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a simplified electron beam induced deposition system and its use in fabrication of oxide nanodevices
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19H02606
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Research Institution | Japan Fine Ceramics Center |
Principal Investigator |
小林 俊介 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 上級研究員 (60714623)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 電子ビーム誘起蒸着法 / 走査型電子顕微鏡 / 酸化物 / 強誘電体 / 電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子ビーム誘起蒸着(Electron Beam Induced Deposition:EBID) 法は電子ビームを用いる走査電子顕微鏡 (Scanning Electron Microscope: SEM) と組み合わせることでナノメートルスケールでの物質堆積(成膜)が実現できる手法である。これまで、このEBID法を機能性酸化物へ適用した例は少ない。本研究では卓上SEM装置に導入可能なシステムを構築することで、トライ&エラーを容易にし、実験効率を高めることで機能性酸化物をEBID法にて作製すること目的とする。すなわち、汎用性の高い卓上SEM装置を用いた新たなナノスケールでの酸化物薄膜作製技術を提案するものである。 卓上SEM装置(日立ハイテク製TM4000)内部へ導入可能なEBID法システム(ガスインジェクションシステム)の設計と構築を実施した。具体的には卓上SEM装置の空きポートを利用し、内部に前駆体となる揮発性化合物を導入し、揮発物質がガスフローラインを通り、ガスノズルから基板へ供給されるシステムを構築した。このガスインジェクションシステムの評価としてカーボン膜の堆積を試みた。その結果、従来のEBID法と同様にカーボン膜を形成できること、また、前駆体の種類、加速電圧やビーム電流量を変化させることで、堆積レートを制御できることを確認した。 今後の研究展開として、インジェクションシステムをさらに発展させ、電極用の金属および酸化物薄膜の作製を試みる。ここで、堆積物がナノスケールであることから、構造解析には走査型透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscopy: STEM)法を用いる。その解析結果を堆積条件へフィードバックし、最適化することで高品質な電極および酸化物の作製を実施していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度は、卓上SEM装置内部へ導入可能なEBID法システム(ガスインジェクションシステム)の設計と構築を実施した。卓上SEM装置のチャンバーには複数の空きポートがあることを確認し、その一部を利用することで、ガスインジェクションシステムの構築を行った。前駆体となる揮発性化合物を導入し、そこから、揮発物質がガスフローラインを通り、ガスノズルから真空領域となる基板へ供給されるシステムである。このシステムを用いて、まず、従来のEBID法により堆積が認められているカーボンを堆積させることができることを確認した。本研究の次のステップとして電極および酸化物の堆積を試みる段階において、課題があることを確認した。 前駆体となる揮発物質は大気中の酸素や水分と反応し容易に分解してしまう。その為、2019年度に構築したガスインジェクションシステムをSEM本体から取り外し、不活性ガス雰囲気(Arガス)中にて試薬を導入する必要がる。そのため、実験効率が低下し、トライ&エラーを容易に行うことが難しくなる。この課題を解決し、実験効率を大幅に改善することで研究を加速させることが重要課題となる。そのため、新たにインジェクションシステムの設計を見直し、効率的に試薬を大気にさらすことなく交換可能な機構を考案するに至った。2020年度前半において、この考案した機構を導入するため、インジェクションシステムの改良を実施する。 当初の2020年度前半の研究計画としては酸化物および電極の堆積を行い、条件検討を実施する予定であったが、現時点で実験効率を改善することにより、研究を加速させることが将来的に有効であると判断し、インジェクションシステムの改良を実施する。その為、進捗がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に構築を行ったEBID法システム(ガスインジェクションシステム)の改良を行い、実験効率をさらに高め、研究を加速していく。この改良を2020年度前半に実施する予定である。ガスインジェクションシステム改良が完了した後、動作検証をカーボン膜を堆積させることにより行う。その後、酸化物デバイスを作製に必要な金属電極および酸化物の作製を実施する。ここで、EBID法による堆積物において、揮発性有機金属を用いる化学蒸着(CDV)法や原子層堆積(ALD)法におてい問題となる成膜物質内のカーボン混入が、同様の課題となることが推察される。堆積条件、すなわち、加速電圧依存性、ビーム電流量、ガス流量、成膜雰囲気、チャンバー内の圧力、原料(前駆体)となる揮発性有機金属化合物の種類等を系統的に検討していくことで、この課題を解決していく。必要に応じて、基板加熱や新たなガスノズルによるアシストガスシステムを追加し、堆積時におけるカーボン混入物をCOやCO2として排出させる機構の導入検討も行う。 さらに、堆積物がナノスケールであることから、堆積物の結晶や組成の構造解析には原子分解能レベルで分析や観察が可能な透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy: TEM)法および走査型透過電子顕微鏡(Scanning TEM: STEM)法を用いる。そして、EBID法により作製した堆積物の解析結果を作製条件へフィードバックし、最適化することで高品質な電極および酸化物を作製していく。電極および酸化物の作製条件が整った段階で、機能性酸化物薄膜デバイスの作製を実施し、評価を行っていく。
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