2020 Fiscal Year Annual Research Report
Research on identification of diamond dislocations and its reduction
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19H02617
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
鹿田 真一 関西学院大学, 理工学部, 教授 (00415689)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺地 徳之 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主席研究員 (50332747)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ダイヤモンド / 転位 / X線トポグラフィ / パワーデバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代省エネパワーデバイス、量子応用デバイスで新たに研究の進むダイヤモンドにおいて「欠陥」が重要課題に浮上している。軽元素のためX線が深く侵入する事、高対称性結晶のため禁制反射が多く用いる回折ベクトルが限られる事の2点に本質的な問題があり、欠陥が詳しく同定できていない。本研究では、放射光X線トポグラフィを駆使して、深さ方向情報の取得と幾何解析による欠陥解析手法の確立と、欠陥の同定、さらには欠陥の低減、無害化を行うことを目的に、研究を実施している。 A) 欠陥解析手法確立に関して、幾何学的解析により転位の方向を同定する手段を確立することができた。20年度はこれを受け、gベクトル一連のセット像の位置比較を用いc軸深さの情報同定より、転位の終点位置を認識する手法が出来た。B) 欠陥同定に関して、Nドープ絶縁HPHT合成結晶基板全体の転位解析を実施した。転位ベクトルが[001], [011], <111>, <211>, <121>及び<112>系に絞られている事などの解析結果を初めて得ることができた。またHPHT基板からエピ膜へ引き継がれて、Band-A発光の起因となる転位の同定を行った。既知の45°転位以外に、刃状転位、30°転位、60°転位が発光起因となっていることが分かった。基板からエピ成長に引継ぎで転位ベクトルと転位種が変化していることや、エピ成長起因の転位はすべてBand-A発光を示すことが分かった。C)欠陥終端手法開発に関して、転位の発生・終端は、転位や積層欠陥などが相互作用していることが推測されるが、20年度はHPHT結晶に関して、転位深さ解析と併せて、積層欠陥に関連して発生・終端する転位の推定を行った。またHPHT基板からの引継ぎ、エピ界面からの新規転位発生の方向など、一部同定する事が出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ダイヤモンドは未だ転位低減が未達のため、転位が一度に多数観察され、欠陥ベクトルの判定すら極めて困難である。放射光施設の単色X線を用いたX線トポグラフィ(XRT)の反射モードを用いてこれらに取り組んでいる。A) 欠陥解析手法確立に関して、19年度に幾何学的解析を行い、転位の方向を同定する手段を確立することができ、バーガーズベクトル及び転位の種類を決定する事が可能になった。20年度はこれを受け、一連のgベクトル像の位置比較を用いたc軸深さの情報同定より、転位の終点の位置を認識する手法が出来た。またB) 欠陥同定に関して、Nドープの絶縁HPHT合成結晶基板全体の転位解析を実施した。その結果、転位ベクトルは、[001], [011], <111>, <211>, <121>及び<112>系に絞られており、それ以外の方向は極めて少ない事など、成長機構に迫るデータを得ることができた。絶縁性HPHT基板からエピ膜へ引き継がれて、Band-A発光の起因となる転位の同定を行った。既知の45°転位以外に、刃状転位、30°転位、60°転位がBand-A発光の起因となっていることが分かった。基板からエピ成長によって引き継がれた一部の転位は、引継ぎの過程で転位ベクトルと転位種が変化していることが分かった。エピ成長起因欠陥のBand-A同定に関して、成長前後のXRT像とBand-Aマッピング像を比較することでエピ膜に新たに形成された転位はすべてBand-A発光を示すことが分かった。C)欠陥終端手法開発に関して、転位の発生・終端は、転位や積層欠陥などが相互作用していることが推測されるが、20年度はHPHT結晶に関して、転位深さ解析と併せて、積層欠陥に関連して発生・終端する転位の推定を行った。またHPHT基板からの引継ぎ、エピ界面からの新規転位発生の方向など、一部同定する事が出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
3項目に分けて、本研究を推進しており、A) 欠陥解析手法確立 に関しては、基板及びエピタキシャル薄膜に存在する転位のベクトル、バーガーズベクトルを同定し、転位の種類を同定できた。またc軸深さの情報も解析可能になった。 これを受けて、当初予定通り、本年度は下記計画で研究を実施する。 B) 欠陥同定:平衡状態合成である高温高圧(HPHT)結晶と、非平衡状態合成である気相合成(CVD)結晶に発生する転位の種類、方向などの相違、結晶の成長に伴う転位伝搬、種結晶や、表面状態など初期状態起因の転位など様々な材料について欠陥が想定される。HPHT基板に関してはドーピングしていない絶縁性結晶、Nドーピングした絶縁性結晶、Bドーピングした低抵抗p型結晶が主なものである。Nドーピングした結晶に関して20年度に詳細な解析を実施し、転位ベクトルの特徴的な発生を確認した。21年度はその他2種について、詳細解析を実施する。また20年度に、CVDによるエピタキシャル薄膜に関して発生した転位と、カソードルミネッセンス(CL)で検出するバンドAとの関連を詳細に解析し、転位の種類を明らかにすることができた。薄膜の転位解析も可能になった事から、基板転位とエピタキシャル薄膜転位の相互関係を21年度に詳細解析する計画である。 C)欠陥終端手法開発:転位の発生と終端は、転位や積層欠陥などが、お互いに相互作用していることが推測される。20年度はHPHT結晶に関して、転位深さ解析と併せて、積層欠陥に関連して発生・終端する転位の推定を行った。21年度は、大型のHPHT結晶における転位の発生・終端の様子を計測・解析する。併せて、積層欠陥・転位同士・WやN不純物との関連で、転位の発生・終端にどのように影響しているか解析を進める。またそれらから転位の終端の方策を探る。
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