2019 Fiscal Year Annual Research Report
レーザー誘起ナノジェットによる物質デリバリー手法開拓と高機能人工歯面の創製
Project/Area Number |
19H02635
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
奈良崎 愛子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (40357687)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 真紀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (00568925)
大矢根 綾子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 上級主任研究員 (50356672)
宮治 裕史 北海道大学, 大学病院, 講師 (50372256)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | レーザーデリバリー / 転写 / レーザー誘起ジェット / バイオインク / ナノ複合粒子 / リン酸カルシウム / アパタイト / 生理活性物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯周病は罹患率の極めて高い生活習慣病であり、その治療法が高度化すれば多くの国民のQOL向上に資する。歯周病の再生治療においては、細菌増殖により破壊された歯表面(歯面)での歯周組織との付着(ペリオドンタルアタッチメント)を早期に再構築させることが重要である。本研究では、生理活性物質とリン酸カルシウムのナノ複合粒子を高濃度に分散させたバイオインクを開発、そのバイオインクを用いて歯面上に高機能人工歯面を形成するため、新たにレーザー誘起ジェットを利用したナノ複合粒子の3次元デリバリー技術構築を目指す。 今年度は、バイオインクの調製ならびにレーザー転写を基盤としたデリバリー技術の研究開発に取り組んだ。 バイオインク調製においては、医療用注射液のみを原料としたone-pot合成技術を用い、リン酸カルシウムナノ粒子を合成した。ヘパリンナトリウムの注射液を分散剤とすることで、ナノ粒子の分散性を向上させ、一次粒子径が200 nm程度のナノ粒子を得ることができた。 レーザーデリバリー技術の開発においては、レーザー照明とハイスピードカメラを利用したレーザー転写用可視化システムを構築した。バイオインク原料である医療用注射液をセルに封入、注射液のレーザー誘起ジェットの観察に取り組んだ。セル構造など最適化の結果、注射液のレーザー誘起ジェット即ち吐出プロセスの可視化に成功した。 また、ナノ複合粒子の比較対象として、バイオミメティック法により生理活性物質としてフィブロネクチンを担持させたアパタイト原料膜を調製、同膜の生理活性(細胞接着活性)をin vitro細胞実験により確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、生理活性物質を担持したリン酸カルシウムの複合ナノ粒子からなるバイオインクならびにその膜のレーザーデリバリー技術の開発に取り組む。 今年度の取組みとして、バイオインク調製においては、医療用注射液のみを原料としたone-pot合成技術を用い、リン酸カルシウムナノ粒子を合成した。ヘパリンナトリウムの注射液を分散剤とすることで、ナノ粒子の分散性を向上させ、一次粒子径が200 nm程度のナノ粒子を得ることができた。 レーザー転写を基盤としたバイオインク描画技術の開発に向け、今年度は、新規導入した可視化用レーザー照明とハイスピードカメラを利用したレーザー転写用可視化システムを構築、可視化の検討を開始した。モデル材料にバイオインクの原料である医療用注射液を用い、まずは犠牲層(レーザー光を高効率に吸収しレーザーアブレーションを起こす層)のレーザーアブレーションにより形成される注射液のレーザー誘起ジェットの観察に挑戦した。具体的には、注射液を、上面は犠牲層、底面に吐出孔を有するセルに封入した状態で、犠牲層が光吸収を有する波長532 nmのナノ秒パルスレーザーを照射し、犠牲層のアブレーションを誘起した。セル構造ならびに犠牲層最適化の結果、犠牲層アブレーションにより誘起されたレーザー誘起ジェット、即ち注射液の吐出プロセスの可視化に成功した。 ナノ複合粒子の比較対象として、バイオミメティック法により生理活性物質としてフィブロネクチンを担持させたアパタイト原料膜を調製し、同膜の物理化学的性質ならびに生理活性の評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、生理活性物質とリン酸カルシウムのナノ複合粒子を高濃度に分散させたバイオインクを開発、次にそのバイオインクを用いて歯面上に高機能人工歯面を形成するため、新たにレーザー誘起ナノジェットを利用したナノ複合粒子の3次元デリバリー技術(バイオインク転写技術)を構築する。生理活性物質としては、歯周組織再生促進効果が期待されるタンパク質(FGF-2、フィブロネクチンなど)や生体微量元素(Zn、Fなど)を用いる。 今後の取組みとして、バイオインク調製においては、引き続き医療用注射液(分散剤:ヘパリンなど)を用いた合成技術により、生理活性物質を担持したリン酸カルシウムの複合ナノ粒子を合成する。実用性の高いバイオインクとして、特に分散性の高いナノ粒子が有用と考えられたことから、分散剤の構造と粒子の分散性の相関などを明らかにする。 バイオインク転写技術においては、昨年度新規に構築したハイスピードカメラを基盤とした可視化システムを用い、レーザーアブレーションにより形成されるレーザー誘起ジェットといった微小領域での高速現象の可視化に引き続き取り組む。具体的には、犠牲層のアブレーションとインクの直接アブレーションを用いた場合の比較検討を行い、その挙動からレーザー誘起ジェット形成のメカニズムに迫る。 また、バイオインクとの比較対象として、バイオミメティック法により生理活性物質(タンパク質など)を担持したアパタイト原料膜の転写プロセスについても可視化し、転写メカニズムの比較検討を行う。
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Research Products
(11 results)