2021 Fiscal Year Annual Research Report
ソフト界面を反応場とする希土類元素およびマイナーアクチノイド分離の新機軸
Project/Area Number |
19H02644
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山崎 信哉 筑波大学, 数理物質系, 助教 (70610301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関根 由莉奈 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究職 (00636912)
田中 万也 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (60377992)
菱田 真史 筑波大学, 数理物質系, 助教 (70519058)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リポソーム / ランタノイド / 希土類元素 / 高レベル放射性廃液 / DGA配位子 / X線分光 / 蛍光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では2020年度に引き続き、ジグリコールアミド系配位子(DGA配位子)を封入したリポソーム(DGAリポソーム)を調製し、REEおよびMAの分離回収技術を構築するため、下記の実験を行った。 ①DGAリポソームの安定性及びREE吸着量の評価:低pHにおけるリポソームの安定性をゼータ電位測定及び粒度分布測定により調べた。この結果、硝酸3Mの条件下で凝集などは確認されずリポソームが安定的に存在することが明らかとなった。さらに、DGAリポソームとユウロピウムを混合し、蛍光量の変化を測定したところ、pH2.0よりも小さくなると蛍光量が減少する事が分かった。このことから、pHを変化させることで、リポソームへの吸脱着を制御できる可能性が示唆された。 ②DGAリポソームによるREEの抽出機構:広域X線吸収微細構造(EXAFS)によりREEとDGA配位子の結合状態を調べた。実験は、高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリー(KEK-PF)で行った。ユウロピウムとDGAリポソームとの結果から、1:1錯体を仮定してフィッティングを行い、結合状態を明らかにした。この結果、DGA配位子の酸素3分子との結合が認められた。 ③DGAリポソームの物理化学的特性:DGA配位子がリポソーム中にどのように分布するについて、KEK-PFでのX線小角散乱(SAXS)および蛍光測定によりその分布を明らかにした。蛍光の実験から外膜表面及び内膜表面に由来すると思われる蛍光量が一致する結果となった。またSAXSにより、外膜と内膜の分布が対象であることを仮定したモデルでフィッティングした結果実験値をよく再現していた。このため、DGA配位子が外膜と内膜に均等に分布していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
DGA配位子をリポソームに導入したDGAリポソームと希土類元素の反応について検討を行ってきた。これまでの研究により、配位部となるDGAと希土類元素との反応についてその結合挙動が明らかにできた。また、リポソームの安定性も確認されたことで実用化に一歩近づいたと考えられる。一方で、pHが低い領域での分配係数が小さくなることから、本系はDGAを用いた溶媒抽出系とは真逆の反応挙動が見られた。今後はDGAとは異なる配位部(結合メカニズム)を持つ抽出系の創出も今後必要になると考えられる。 また、これまでの成果をまとめた論文が受理に至っていない。今後は論文の修正などを優先していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にむけて、マイナーアクチノイドを希土類元素に加えてDGAリポソームの結合挙動や分離選択性について検討を行う。また、実用化に向けて放射線耐性などのデータも合わせて取得していく。さらにこれまでの結果を踏まえて、最も効率的に希土類元素を回収できる条件や、実用化に向けたシステムを構築し提案する。また、リポソームに疎水性の配位子を混合した系を他の元素などに応用するために、重要な要因などを取りまとめて一般化する。
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