2019 Fiscal Year Annual Research Report
超薄厚プラスチックシンチレータによる選別α-γ同時/反同時計数放射能測定法の開発
Project/Area Number |
19H02651
|
Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
山田 崇裕 近畿大学, 原子力研究所, 准教授 (50618816)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 放射能 / α核種 / 内用療法 / 同時計数法 / γ線スペクトル / 放射線計測 / α線 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下について研究を進めた。 (1)超薄厚プラスチックシンチレータを用いた医療用α核種の測定試料調整法の検討を行った。生理食塩水等を含む医療用α核種溶液におけるα線自己吸収の影響について評価するため、241Amを用いて実際の放射性薬剤の添加物条件を模擬したα核種溶液を調整し、高検出効率達成のために希釈及び分散材効果を検証した。この結果、少なくとも市販薬を50倍程度希釈と分散材による処理を行わなければ90%以上の検出効率が見込まれないことが明らかになった。また、α線及びβ線感度について、α/β核種が混在する223Raでは個別的評価が困難なため、241Am及び32Pを用いて20~100μmの厚さの異なるシンチレータによって個別的に検出効率を評価し、20μmのシンチレータによってα線検出効率を90%確保しつつ、β線の寄与を1.3%に抑制し、α線を選別的に測定できることがわかった。さらに223Ra測定において散逸が懸念される娘核種の219Rnガスについて、線源の滴下乾燥後、シンチレーションシートに線源を密閉し、219Rnガスの漏出しないことを、Ge検出器を用いた連続測定により検証した。この結果少なくとも3日は試料中の放射平衡が維持され、この期間内での測定中の試料安定性が確認できた。 (2)223Ra放射能絶対測定への4παーγ同時計数・反同時計数スペクトロスコピ手法の適用のため、アナログ式による装置の整備を行い、60Co、241Amを用いた基礎データを取得し、4πα(β)ーγ同時計数・反同時計数スペクトロスコピ測定が可能となった。また、(1)(2)で得た結果により、実際に223Raを用いた反同時計数スペクトロスコピ手法を試み、20μmのシンチレータを用いて90%超のα核種検出効率を1%未満のβ線核種の寄与で達成できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、(1)医療用α核種の放射能測定のための試料調製条件の最適化(2)α-γ同時計数・反同時計数スペクトロスコピ手法の適用のため、アナログ式による装置整備とその性能評価のための基礎データ取得を計画した。 (1)については、実際の放射性薬剤の添加物条件を模擬した241Am溶液を用い、10~100μmの薄厚プラスチックシンチレータに対するα線線検出効率を評価する計画に対し、10μmシンチレータは厚さのばらつきが大きく十分評価出来なかったものの、20~100μm厚での評価は行えた。また、同時に32Pを用いたβ線寄与の評価も行い、ほぼ計画通りに進められた。実験により、β線の寄与は、α線と比較し散乱の影響によって、シンチレータの厚さの僅かな違いによる影響の可能性について示唆され、より詳細な検証の必要性が見込まれた。 (2)については2枚のシンチレータに線源を挟んだの試料を光電子増倍管にセットし、このα検出部をGe検出器直上に配置した4πα(β)-γ同時計数・反同時計数装置を構築し、60Co及び241Amを用いた基礎データの取得することが出来、計画通り測定装置の調整・整備を行うことが出来た。さらに、構築したシステムにより実際医療で用いられている223Raの反同時計数スペクトロスコピ手法によるα線計数効率の評価まで進めることが出来た点は、当初計画より進めることが出来た。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は以下について研究を進める。 (1)2019年度に確立した試料調製方法及びその条件によって223Ra測定試料を作成し、娘核種の219Rnの散逸について、計測の信頼性確保のためにより高感度な測定による検証試みる。この検証には空気流通形のデシケータの排気口に比例計数管方式のガスモニタを設置し、乾燥時の219Rnの漏出に関して子孫核種により検出する方法を検討する。この測定を試料密閉後に適用し、漏出がないことを極めて低い検出限界下での測定により確認し、本試料の測定中の安定性を検証する。 (2)223Ra放射能絶対測定への同時計数・反同時計数スペクトロスコピ手法の適用のため、前年度のアナログ式システムをディジタル式とし、Co-60やAm-241といった基本核種により従来式との整合性を確認する。本装置によってリストデータ方式による223Raのデータ取得し、様々なα/β線ゲート信号条件での反同時/同時γ線スペクトル解析をオフライン解析で行えるよう検討を進める。また、2019年度に薄厚シンチレータを用いたα線選別測定に対するβ線寄与評価を行ったが、散乱を起こしやすいβ線の場合には、厚さの僅かな違いによる感度変化が見込まれた。この検証について、井戸形検出器を用いたγ線の高効率化、計算シミュレーション等によって反同時計数によるβ線寄与のより精密な評価に関する検討を進める。
|