2021 Fiscal Year Annual Research Report
揚水井近傍に発生する地下水流れを活用する高効率型地中熱利用システムの実用化
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19H02655
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
藤井 光 秋田大学, 国際資源学研究科, 教授 (80332526)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 洋平 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究チーム長 (90356577)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地中熱利用 / 地下水 / シミュレーション / 温暖化対策 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は揚水井の近傍で発生する地下水流れによる地中熱交換井の効率改善効果を実証する以下のフィールド試験と検討を行った。主な実施項目を以下に記す。 1.1~2年に開発した地下水流動シミュレーションソフト FEFLOWを用いた秋田平野地域の地下水・熱移動を再現する数値モデルに秋田市における揚水データを追加した。このモデルを用いて,秋田市において冬期に揚水を行った場合に一戸建て住宅に必要な地中熱交換井の長さを計算した。この際,過去14年間の秋田市の年平均温度から2016年度冬期の気象データを使用して熱負荷を計算し,同市内の各地点における地中熱交換井必要長さを算出し,秋田市中心部における地中熱ポテンシャルマップを構築した。さらに,揚水井の有無を変更し作成した2つのポテンシャルマップを比較することで揚水のGSHPシステムの初期投資削減効果を検討した。 2.山形市に位置する揚水井(深さ:45.95m、井戸径:100A)および揚水井からの距離が異なる3本(それぞれ4m,9m,17m)の地中熱交換井(深さ:102m、呼び径25AのダブルU字管、珪砂充填)を用いて揚水を伴うTRTを実施した。フィールド試験場の地質は主に粘土層や砂礫層から構成される。TRTは揚水量を、揚水なし、50L/min、100L/min、200L/minの各ケースにて行い,熱媒体循環流量および熱負荷条件は20L/min、5kWとした。TRTの結果より揚水量の増加に伴って熱交換能力の向上が認められた。特に揚水量200L/minの場合においては温度上昇が大きく抑えられ、熱交換能力の向上が顕著であった。一方で、揚水井から地中熱交換井までの距離と熱交換能力の改善には明確な相関が見られなかった。これは地盤の不連続性や不均質性によるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
山形市内および秋田市内における揚水を伴う熱応答試験(TRT)と冷暖房試験はコロナ禍での制限はあったものの,すべての項目が順調に実施できた。また,両地域の地質データに基づいて構築した数値シミュレーションモデルはTRTおよび冷暖房試験の結果を高い精度で再現し,モデルの妥当性が示された。 秋田平野を対象とする広域モデルにおける融雪目的の揚水データの収集とモデル入力は完了し,秋田市中心部における揚水を考慮したポテンシャルマップの構築が完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は研究1~3年度に秋田市および山形市における実験サイトで実施した揚水の影響下における熱応答試験の結果,およびこれらデータを用いて構築した数値シミュレーションモデルに基づく知見を総括する。そして,揚水井の近傍で人工的に喚起される地下水流れによる地中熱交換井の効率改善効果を考慮した,両地域における地中熱ポテンシャルマップの構築を行う。以下に研究内容を記す。 1.秋田平野における地中熱ポテンシャルマップの構築 秋田平野の地質情報に基づき,揚水井を平野全体の数値モデルを数値計算ソフトFEFLOWを用いて構築し,妥当性を計算値とフィールド測定における熱応答試験や地温測定の結果との比較により検定し,精度の向上を図る。 2. 山形盆地平野における熱応答試験(TRT)と数値モデリング 山形市内に既設の試験サイトにおいて昨年度実施した熱応答試験を継続する。試験結果より揚水量,井戸間距離と熱交換効率の相関を解明し,これらの結果に基づいて山形平野における既存の地中熱ポテンシャルマップに揚水の影響を組み込んでマップを高度化する。 秋田平野および山形平野において構築した揚水を考慮したポテンシャルマップは,地中熱利用システムの普及の指針とすべく一般公開し,同システム普及による温暖化対策への貢献を目指す。
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