2020 Fiscal Year Annual Research Report
Cu-Mo selective recovery from As containing copper sulfide with sea water flotation
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19H02659
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
三木 一 九州大学, 工学研究院, 准教授 (10706386)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹木 圭子 九州大学, 工学研究院, 教授 (30311525)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 浮遊選別 / 含ヒ素銅鉱物 / 含モリブデン銅精鉱 / 過酸化水素水 / ピロ亜硫酸ナトリウム |
Outline of Annual Research Achievements |
一昨年度までの研究により、難しいとされてきた含ヒ素銅精鉱からの浮遊選別によるヒ素の分離を、安全で安価な過酸化水素水を添加することにより分離できることを明らかにしてきた。また、含モリブデン銅精鉱からのモリブデンと銅の分離についても、従来使用されてきたNaHSと比較して安全で安価なピロ亜硫酸ナトリウム(MBS)の添加により、また特に海水を用いて行うことが出来ることを報告してきた。 昨年度においては、より実操業に近い方法による検討を行うため、採掘を行った鉱石からの処理方法について検討を行った。実際の選鉱場でのプロセスを参考に、鉱石の粉砕、ふるい分け、粗選の最適な条件を見出し、その結果得られる実精鉱試料を用いて、含ヒ素銅精鉱からのヒ素分離、含モリブデン銅精鉱からのモリブデン分離について検討したところ、鉱石および精鉱を用いても、同様に浮遊選別による分離を行うことが出来ることが明らかになった。分離効率は約60-70%と高く、様々な不純物が含まれている系においても処理条件、攪拌条件の調整により処理が可能であった。 また、銅とヒ素の分離に使用する過酸化水素水、銅とモリブデンの分離に使用するピロ亜硫酸ナトリウムの効果について、表面分析をXPSで行うことにより検討した。その結果、過酸化水素やMBS処理により、硫ヒ銅鉱等の含ヒ素銅鉱物、輝水鉛鉱などのモリブデン鉱物は、表面性状の変化が少なく疎水性であったが、主要な銅鉱物である黄銅鉱や斑銅鉱の表面はFeOOH等の親水性生成物が存在しているために、親水性となり、これらのために浮遊選別において分離が可能であることが分かった。不純物の効果を見るために、一般に銅鉱石中に含まれる銅藍、輝銅鉱を、銅線と硫黄から焼成することにより作成し、浮選による検討も行っている。これらの結果は、各種学会、論文において発表し、高い評価を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していたように、鉱石の段階からの、銅鉱物とモリブデン鉱物、ヒ素鉱物の分離について、実操業のプロセスを参考にして行った。実操業をスケールダウンした設備として、ロッドミル、ボールミル、大型浮選機(デンバー浮選機)を準備し、鉱石粉砕条件(鉱石サイズ)や粉砕、浮選時のパルプ濃度、処理時間について、実操業にそのまま応用できるように検討を行った。鉱石の産地、保存条件、組成により細かい条件を変える必要はあったが、どの鉱石においても、銅鉱物とモリブデン鉱物、ヒ素鉱物の分離において、高い分離効率が得られた。これらのことにより、鉱石の処理においては、過酸化水素水およびピロ亜硫酸ナトリウムの添加による、酸化還元効果が実操業プロセスにおいても有用となると考えられた。これらの検討においては、鉱物表面の変化をXPS分析した結果により、有効性を評価し、考えてきた機構の妥当性を確認した。効率よく分離が起こっているときには、モリブデン鉱物、ヒ素鉱物の表面は変化が少なく、疎水性を保っていることと比較して、銅鉱物の表面はFeOOH等の親水性生成物が存在していた。銅鉱物として、主な初生硫化銅鉱物として黄銅鉱、斑銅鉱に主に注目してきたが、二次硫化銅鉱物として銅藍、輝銅鉱等も存在しているため、これらの鉱物に及ぼす影響についても確認するため、銅藍、輝銅鉱については金属銅と元素硫黄から焼成を試み、これらの鉱物の生成が可能となった。これら従来法では分離が困難であった鉱物について、鉱石の段階からの分離可能性が示されたことは、今後パイロット試験や実操業への応用への可能性が広がったと思われる。一昨年度からの結果について、学会、論文において発表を行ってきており、高い評価を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
一昨年度、昨年度において、高純度鉱物、精鉱、実鉱石と広い範囲での銅鉱物、モリブデン鉱物とヒ素鉱物の分離が可能であるとの結果が得られた。最終年度となる今年度においては、より効率的、経済的な条件について検討を行い、またよりヒ素やモリブデン濃度が高く純粋な銅鉱物の割合が多い精鉱に分離できるよう、分離方法の組み合わせ、浮遊選別の繰り返しなどの方法を検討する。分離の効率的、経済的な条件については、これまで検討してきた分離メカニズムについて、電気化学的手法を用いてより詳細に検討を行う。これまで行ってきた方法に加え、3Dインピーダンス分析により、表面生成物および中間生成物について同定し、各条件においてこれら生成物が浮遊選別にどのように作用するか評価する。評価の方法は、接触角測定、原子間力顕微鏡、Mineral Liberation Analysisなど、広範に行う。これらの方法により各分離工程を最適化する一方で、浮遊選別の組み合わせ、繰り返しによる分離の最適化、モリブデン、ヒ素の濃縮および銅鉱物の割合が多い精鉱の取得を検討する。浮遊選別の各工程前に、過酸化水素水およびピロ亜硫酸ナトリウムなどの処理を行うが、これらをより効率的にするために、短い時間の湿式粉砕、シェアアジテーションなどを行う。あまり重視していなかったシェアアジテーションの回転速度が大きく影響する予備実験結果を得ており、これらについて検討する。通常の浮遊選別では、浮遊選別を繰り返すことにより希望する元素濃度を濃縮しているが、本研究においても検討し、モリブデン濃度としては販売可能な50%、低ヒ素銅精鉱としては、ペナルティの抑えられる、ヒ素濃度0.2%以下を目標とする。予備実験結果、小さな系の実験でよい結果を得ているため、鉱石からの粉砕、大型浮選機を用い、また浮選分離後の試料を前の段階に戻す等、より実操業に即した方法の検討を行う。
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Research Products
(13 results)