2019 Fiscal Year Annual Research Report
A new approach to securing energy resources from sea water stably
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19H02660
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
原 一広 九州大学, 工学研究院, 教授 (00180993)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 海水ウラン捕集 / 資源枯渇 / 高分子ゲル吸着剤 / カーボンナノファイバー / γ線重合 |
Outline of Annual Research Achievements |
海水中に大量に溶存するレアメタルを捕集するために高分子ゲル吸着剤を利用し、商業的に成り立たせるために低価格化するには、高い吸着効率を実現することが必要である。そのためには、ミクロなレベルでは激しいネットワークと官能基の熱運動が吸着を阻害するのを防ぐために、ネットワーク中に剛直なファイバー状の物質を挿入することが有効ではないかと考えている。 そこで本研究では、ナノファイバーを高分子ネットワークにミクロなレベルで挿入することによる、力学強度と吸着効率に与える影響を明らかにすることを目的とした。そのために、化学合成高分子であるカーボンナノファイバーを組み込んだアクリルアミドゲルと、γ線重合によるセルロースナノファイバーを組み込んだカルボキシメチルセルロースゲルの試作を行った。 まず、疎水性のカーボンナノファイバーを水溶液で分散させるため、酸化ファイバーの作製、分散機の試用を行い、ファイバーを混ぜたアクリルアミドゲルを作製することができた。しかし、ファイバーの混合量が僅かで、予想された弾性率の変化を確認することは出来なかった。今後、導入量を変えて特性を調べる必要がある。また、分散を促す界面活性剤を用いた場合は弾性率の減少がみられ、重合反応の阻害が示唆されたので、界面活性剤についても影響を明らかにする必要が生じた。 カルボキシメチルセルロースゲルでは、セルロースナノファイバー混合で高剛性になるが低吸着になるらしいことが示されたが、ミクロ観察によるとファイバーが凝集しており、ネットワークの熱運動を抑えるには適していないことや界面活性剤の影響が示された。 以上の様に、ファイバーを混合したゲルを作製することに成功したが、ファイバーの分散と量について、問題があり、目的を達するにはよりミクロなレベルの均一なファイバーの分散が必要となることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において最も困難が予想されたのはゲルにファイバーを混ぜ込むということである。化学合成高分子であるカーボンナノファイバーを組み込んだアクリルアミドゲルを作製しようとしたが、カーボンナノファイバーが疎水性であるため、プレゲル水溶液中に攪拌を試みても、密度が小さいファイバーがすぐに分離してしまった。しかし、文献調査や酸化グラフェンでの事例を応用して、比較的均一に混合されたプレゲル溶液を作製することに成功した。さらに、カーボンナノチューブの攪拌用に開発された分散機が有効であることも分かったので、今後は攪拌のためのパラメータを最適化するなどの方向性が明確になっている。同様に、セルロースナノファイバーを組み込んだカルボキシメチルセルロースゲルもファイバーを混ぜ込むまでは出来ており、より充分な混合を行うことでより一様なゲルを作製できる見込みが立った。 初年度の当初目標は、混合ゲルの作製法を探索しある程度確立することであり、ほぼ達成されたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ナノファイバーを高分子ゲルに混合することに成功したが、ネットワークの熱運動を抑制するためにはよりミクロなレベルで均一にファイバーを導入する必要がある。走査電子顕微鏡による観察では、サブマイクロメートルのスケールでもファイバーは均一に混ざるより凝集しているような傾向が見られている。混合していないものとの力学特性の違いが明確で無いことから、混合量が充分ではないのではないという懸念も大きい。 また、これまではファイバーに界面活性剤を併用すると分散性が高かったが、界面活性剤が使われている場合にはゲルの重合反応への阻害効果があるので、界面活性剤の影響についても定量的に評価する必要がある。 今後は分散性を高めるため、試用で高い効果が見られたカーボンナノチューブ分散用に開発された超音波分散機を購入・使用して、より混合時間を長くし、ファイバーの量を変えるなどした上で、電子顕微鏡、X線測定、光学測定などによる構造解析と力学・元素吸着特性の評価を進めてゆく予定である。特に、吸着特性における多元素での相互作用や選択性とゲルの構造とは相関が期待されるので、それらを明らかにしてゆきたいと考えている。
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